「自衛隊の高校」を取材して改めて考える「憲法改正」

田原総一朗です。

今年6月に対談した際、小泉進次郎さんが私にこう言った。

私の地元の横須賀に、日本唯一の「自衛隊の高校」があるんです。

防衛大学を取材したことはあるが、高校があるとは知らなかった。

さらに小泉さんはこう言った。

この高校に、サイバーセキュリティの人材育成コースが新設されたんです。田原さん、ぜひ取材してみてください。

それはおもしろい。僕の好奇心がむくむくと湧いてきた。

そこで先日、神奈川県横須賀市にある、陸上自衛隊の武山駐屯地を訪れた。この武山駐屯地内に、「陸上自衛隊高等工科学校」がある。全国から中学を卒業した男子、1学年あたり約350人が、自衛官になるための訓練を受ける。

この中に、2021年から、「システム・サイバー専修コース」が新設されたのだ。サイバーアタックが、多発する時代。日本はサイバーセキュリティ対策が、先進国の中で遅れていると言われる。

自衛隊の高校にこのような人材育成のコースができたことは、すばらしいことだ。現在、年間約30人のサイバー要員が、育成されているという。生徒たちは、規則正しい寮生活を送りながら、実に熱心に学んでいる。

生徒たちはどんな動機で入校するのだろうか。教育部長の中野昌英氏にうかがうと、「国を守りたい、弱い人を助けたい、手を差し伸べたいという、強い意思を持って入校する生徒」が多いそうだ。また、自分自身が被災し、自衛隊の支援を受けたり、自衛隊の活動を報道で知ったりして、志望する生徒も増えているという。

僕はそんな若者たちを見て、頼もしく思うと同時に、ある心配がよぎった。日本は自衛隊を軍隊として規定していない。こんな国はほかにない。僕は、かねがね、「自衛隊の位置付けの明確化のために、憲法を改正すべき」と主張してきた。やる気に満ちた生徒たちに、日本の「自衛隊」の位置づけをどう教えているのだろうか。

僕は率直に中野先生にうかがった。「生徒には防衛力ということをどのように教えているのか?」

中野氏は、

紛争の解決手段としての戦争を否定しているが、自衛権は否定されていない。その行使のために自衛隊の存在意義がある。国内には警察があるが、国際社会には警察がない。自らの努力で、国家の主権、領土、国民の安全を守るしくみが必要で、そのための防衛であり、その必要性をここでは教えている。

こう語った。

中野氏の言葉は力強かった。まったくその通りだと思う。

しかし、人の役に立ちたいと、一生懸命学ぶ生徒たちを見て、やはり、「自衛隊」の位置づけを明確にしたほうがよいのではないかと、改めて考えた。意欲ある彼らの未来に陰りがあってはいけない、と切実に思うのである。


編集部より:この記事は「田原総一朗 公式ブログ」2023年9月25日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。