クレーマーが得をする理不尽な世の中

一部の運営会社に対する宿泊料金の未払い問題が起こっているブッキングドットコム社。

私も宿泊金額の支払いが滞っている被害者の1人として、同社の日本法人にコンタクトし支払いを求めてきました。日本法人の代表と話し合いの機会を持ったものの、支払いに応じる気配が無いことから、金曜日に他の運営者と共に集団提訴に踏み切りました。

この動きがメディアに大きく取り上げられ、ついに国土交通大臣が対応に乗り出すとコメント。監督官庁がようやく重い腰を上げてくれました。

これに対し、ブッキングドットコム社も事の重大さにようやく気がついたのか、本社と協議し未払い金を速やかに支払うと弁護士を通じて回答してきました。

今まで何度も約束を反故にされてきたので、回答してきた通りに実際に支払われるかどうかは、まだ予断を許しません。ただ集団提訴がメディアで取り上げられたことが、大きな影響を与えたことは間違えありません。

ここで腑に落ちないのは、ブッキングドットコム社が、集団提訴をしたメンバーに先行して支払いをするような内容を示唆していることです。

提訴をすれば慌てて支払うが、提訴しなければ後回しにされる。声を上げないと正当な支払いがなされないというのは、何とも理不尽なことです。

しかし、これと似たことは、実際に頻繁に起こっています。

コールセンターには顧客からのクレームの電話が頻繁にかかってきます。声が大きなクレーマーは、トラブル解決に向けて強引に自分の要求を通してしまうことがあります。いわゆる「ゴネ得」という状況です。

気が弱くて、自己主張をしない「人の良い人」が損をして、強気で自分勝手な要求をする「わがままな人」が得をする。

今回の未払い問題は、集団提訴したメンバーがクレーマーという訳ではなく、正当な権利の主張をしているだけです。それでも「言ったもん勝ち」という状況には変わりなく、なんとも後味が悪い結末を迎えそうです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年10月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。