社長のベンツがこっそり国産車に変わった理由は、倒産間近のシグナル?(横須賀 輝尚)

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社長の人間関係が変わるのは「金策」。税理士やコンサルタントへの依存が始まると、会社がいよいよ危険水域になっていることがあります。

「ヤバくなってくると、社長の人間関係に変化が表れます。通常時なら、社長の人間関係というのは多岐にわたるものがあり、友人もいれば、経営者仲間もいる。あるいは商工会議所やロータリークラブなどの経済団体の知り合いなども交流があるでしょう。

ところが、お金に困ってくるとこの人間関係は「お金中心の人間関係」に変わってくるわけです。」と言うのは経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。

危ない会社に出てくる「危険な登場人物」。

例えば会社が危険水域になると、登場人物はこんな感じになります。

  • 金融機関の担当者──お金を借りるため
  • 不動産会社──自分の不動産を売却するため
  • 保険会社──生命保険などの解約
  • コンサルタント──複数のコンサルタントが来ることも
  • 税理士──税理士も訪問回数、打ち合わせ回数が増えたりする
  • なんか鑑定とかしてくれる人──美術品やその他嗜好品の売却
  • 投資家らしき人──この人を「いい話を持ってきてくれた」「恩人」とか言い出したらヤバい
  • これまでに関わりがない層の人──ヤバいところから借りているのかも

ちなみに、金融機関の担当者、不動産会社、保険会社に関しては、いい意味で会うこともありますので、一概には言えないことは付け加えておきます。

業績がよくて、金融機関からもっと借りてほしいということもあるでしょうし、同じく不動産投資を始めるのかもしれない(これも是非がありますけど)。あるいは、生命保険は節税のためかもしれない。

とはいえ、ガラッと社長の人間関係が変わったら要注意、ということです。

社長の不在が増える、連絡が取りにくくなる、乗っている車が変わる

さらにふたつのシグナルについて解説します。まずひとつは金融機関の担当者目線の話。

業績がいいときは、社長はいつでも会ってくれます。会社が好調なことも伝えたいし、それを伝えることが金融機関の評価も上げます。ですから、割と突然訪問しても会ってくれるし、むしろ歓迎される。でも、会社が厳しくなり始めた途端、この態度は変わります。

まず、社長の不在が増えます。「あれ? 前は会社によくいたのに……」。加えて、喜んで出てくれた電話連絡も、折り返しがデフォになったり、その折り返しさえなくなってきます。

あんまり会いたくない。話をしたくない。つまり、業績が芳しくないんです。このように、連絡が取りにくくなります。

まあ、これは金融機関の担当者とだけでなく、取引先や顧客全般にいえます。そんなことより、会社のお金がなくなってきて、それどころじゃないのです。まあ、儲かるって話なら逆に飛びついてくるわけですが。

それから、わかりやすい変化といえば、やはり社長の車でしょう。車って、その人の好みが出ます。これまでは「車といえば、ベンツのSクラスしかありえない」とか豪語していた社長が、しれっと国産車に乗り換えていた。なんてことがあったら、何かあったとしか思えません。

こういうところにも変化が出ますので、「こだわりの強い社長の所有物の変化には要注意」ってことになりますね。

金融機関への返済、各種の支払いが遅れ始める

綻びはほんのちょっとしたことから見えてくるものです。もうひとつのシグナルは「支払いの遅れ」。

例えば、各種の支払いというのが会社経営にはあります。家賃や光熱費などの基本的なものに加え、各種の外注費。税理士の顧問料や金融機関からの借り入れの返済なんかもそうですね。会社というのは、様々な協力者のもとに成立しているといえます。

こうした毎月の支払いの多くは、引き落としのような「何もしないで口座から支払う」というパターンが多いといえます。クレジットカードの支払いとかもそうですね。

こうした毎月の支払いに遅れが出るのです。これは「遅れた」というより「銀行の預金残高が不足した」という事実に注目すべきです。だいたいこの事実がわかると社長は「ああ、残高不足ね。ほかの口座から支払うから。たまたま口座にお金がなかっただけで、問題ないよ」ってなもんで、まったく問題ないことを強調します。

もちろん、会社が複数の銀行口座を持っていることはよくあることですし、引き落とし額がたまたま生命保険料など高額だったというのならわかります。そして、それが事実ならば単なる管理ミスなのでしょうけど、支払いに使っている口座の残高が一瞬でも引き落としに耐えられない残高になるって、ちょっと大丈夫かな……と思うのが心情です。

これには2パターンあって、本当に会社の資金繰りがヤバくてお金がない場合がひとつ。そして、本当にいるんですけど、マジでお金の管理がだらしないだけっていう場合もあります。

中小企業って、本当に社長で決まるんです。社長の性格がこうした結果を生むわけですが、いずれにせよ、お金にだらしないってのは不安要素ですよね。

ちなみに、金融機関への返済は、仮に引き落とし不能でもきちんと連絡をして当月中に返済をすればセーフ。翌月になれば取引先としての評価が下がります。金融機関の担当者からすると「いつもは引き落としできていたのに、最近は即日引き落としじゃなくなってきた」というのは要注意として見るそうな。様々なところに、変化って表れますね。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
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公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年10月24日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。