犯罪組織が蔓延る中南米
中南米は犯罪組織の巣窟だ。一番注目を集めるのは麻薬組織カルテル。カルテルはコロンビアとメキシコを軸に中米3カ国、ベネズエラ、ペルー、エクアドル、ブラジル、ボリビア、チリ、アルゼンチンなど中南米の大半の国に浸透している。カルテルが浸透すれば、それを末端で支える下請け的なギャング組織が各国に存在することになる。
更に、中米3カ国で蔓延る犯罪グループがある。マル・サルバトゥルチャ(MS13)、バリオ18(B18レボルシオナリオウス)、バリオ18(B18スレーニョス)の3つが存在している。組員は若者が主体で身体に入れ墨をしているのが特徴だ。
そして最近メディアで話題になっているのがトゥレン・デ・アラグア(Tren de Aragua)と呼ばれている犯罪組織だ。この犯罪組織はベネズエラの北部に位置するアラグア州にあるトコロン刑務所内で2013年に誕生した。それが一挙に話題になったのは、今年9月20日に1万1000人から成る警察と軍隊がトコロン刑務所を包囲して、この犯罪組織を一掃したことだ(10月4日付「インサイト・クライム」から引用)。
何しろ、彼らが刑務所の支配者で、刑務所の所長や刑務官は彼らの犯罪行為を黙認しているだけであった。
この組織のリーダーエクトル・ルステンフォード・ゲレロ(通称ニーニョ・ゲレロ)を始め幹部は警察と軍人によって一掃される前に刑務所を脱走した。現在ベネズエラ国内では11の自治州で縄張りを張っているという。
鉄道の労働組合員が組織した
そもそもトゥレン・デ・アラグアという呼び名はアラグア州を縦断する鉄道の労働組合のメンバーが施工業者を恐喝したり、作業に使う部品などを盗んで密売していたことからアラグアの列車という名前から付けられたものである。
この組織のメンバーが犯罪を犯して収監されると、彼らが刑務所内で組織をつくった。一旦釈放されたメンバーは刑務所内の幹部から指示を受けて犯罪を犯して行ったのである。
それが急成長した背景には、ベネズエラから現在までおよそ800万人が貧困から逃れるために国外に脱出した移民者を餌にして利用したことからである。彼らを恐喝したり、少量の麻薬を運ばせたり、又先行き不安な女性たちに近づいて色々親切をした後にその恩義を売りつけ、支払いができない場合は売春を犯すことを義務づけた。そのようにして金銭を稼いでいるのである。
暗殺者になることもある
現在までこの組織のメンバーは2500人から3000人いると推測されている。この組織について執筆したロナ・リスケス氏によると、およそ5000人いると指摘している。(9月21日付「BBC Mundo」から引用)。
この組織が最初の活動を開始したのベネズエラと国境を接しているコロンビアである。その後エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、ブラジル、コスタリカ、パナマなどにも足を延ばしている。彼らが進出する先では地元の犯罪組織と縄張り争いをすることもある。カルテルや革命軍など武器を持った強力な組織とは戦うことはできない。しかし、彼らは隙間を縫って金儲けになる犯罪を狂暴に犯して行ったのである。
このメンバーでベネズエラ出身のエディソン・アグスティン(通称カティレ)はペルーでシカリオ(暗殺者)となって7人を殺害している。同様に、ブラジルでは地元の強力な犯罪組織エル・プリメル・コマンド・デラ・カピタルと協力関係を結んでいるとされている(同上紙から引用)。
ベネズエラは政府自らが犯罪組織化している国だ。特に、政府の配下にある軍隊は麻薬組織をもっている。そのトップにいるのがマドゥロ大統領と元軍人で現在政府のナンバー2としての実権を握っているディオスダド・カベーリョ氏だ。政府自らが犯罪組織の長となっている国だ。犯罪組織が生まれるのは容易である。