理想的な人間関係は「金の切れ目が縁の切れ目」

黒坂岳央です。

誰もが大人になると痛感するもの、それが「金の切れ目が縁の切れ目」である。

この言葉は通常、ネガティブな文脈で使われる事が多い。お金や社会的地位がある内は人がよってくるが、ひとたび力を失えば静かに波が引くように人が離れていき、いざ困った時には助けてもらえないという具合である。理想的な人間関係とは、すなわちこの逆とされ「成功前から応援してくれ、失敗して失った後も寄り添ってくれる人間関係」といわれる。

これらすべてを理解した上であえていいたい。このような人間関係は本当にダメなのか?と。むしろこの前提に立って人生戦略、ひいては人間関係の戦略を構築するべきでは?と。

強い反発が予想されるテーマだが持論を述べたい。

Mukhina1/iStock

大人の人間関係は「利害関係が9割」

「大人になると友達ができない」
「なんでも話せる友達がいなくて寂しい」

という意見をよく見る。たしかにそうだ。一応、自分も建前上は子供の学校の保護者同士で話ができる相手がいる。パパ友とかママ友とか呼ばれるので、広義の「友達」といえるかもしれない。

だが、その本質は学生時代にバカをやれば友達とはまったく性質が違う。保護者間の人間関係など、会社の同僚とほぼ同じであり、つまるところ「利害関係者」に過ぎない。よほどの例外を除いて、子供が学校を出ればこうした関係はたちまち自然消滅する。まあ当然である。学校の情報共有や子供間のトラブルのホットラインとしての役割がその関係性の本質であり、結局どこまでいっても「利害関係者」なのだから。

利害関係者、というと寂しい感覚を覚えるかもしれない。だが、それは何の問題も違和感もなくむしろこれが自然である。人間は一人で生まれ、一人で死んでいく。最初から本質的には孤独に生きることを運命づけられた生物だ。利害というお互いをつなぐ理由が消えたらそこで終わりであり、それを無理に止めようとする方が違和感を覚える。

ウェットなズッ友より利害関係者にメリット

筆者は知名度や影響力などほぼゼロでしかなく、単なる一般人でしかない。だが、それでも雑誌やネットニュース、YouTube、テレビにビジネスで露出することがあり、たまたまそれを見た古いクラスメイトから10年、20年ぶりに連絡をもらうことが時々ある。

学生の頃は利害関係などなく、バカな遊びで騒いだり肝試しで盛り上がったりという関係性だった。だが、連絡をもらって少しばかり昔話を楽しむと、大抵の場合は先方から「利害話」を持ち込まれることがよくある(もちろんそうでないケースもあるのだが)。ハッキリいうと仕事やお金で助けてほしいという打診である。しかも「友達なのだから」と無償であれこれと頼まれることが多く、最近は旧友からの久しぶりの連絡にはつい警戒してしまうこともある。

自分としてはランチでもしながら学生時代の思い出話と、近況報告くらいでサラッと終えたいと思っているのだが、向こうはそう考えてくれない事も多い。「ズッ友」というと聞こえがいいが、友達という関係性を盾に、明確な利害関係者となることを避けて「あくまで無償のボランティア」という体であれこれ頼み事をされてしまうことが多いのだ。

これと比べれば、最初から利害関係者となった相手の方がよほど気楽に感じる。つまり、ビジネスの取引先だ。顧客としてならこちらが提供できるソリューションやサービスは明確であり、先方も事前にそれをよく理解した上でアプローチを頂く。そのため、こちらが出すべき結論はわかりやすく、面倒さを感じるウェットさもない。最短最速低コストで先方の問題課題解決を実現させることに尽力すれば、クライアントとは良好な関係を維持できる。その中で「せっかくなので今度飲みにでも」みたいな展開になり、そこで楽しい話ができればベストだろう。

利害関係者の方が昔ながらのズッ友より、よほど気楽かつよほど良好な関係でいられると思うのだ。

「金の切れ目」にならない努力

「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉はたしかにネガティブな色彩を帯びている。だが、「金の切れ目」にならなければいい。

もちろんビジネスも人生も何があるかわからない。自分もこの記事を書いている前日、青天の霹靂というべき大きなインパクトがビジネスで起きた。だが、そうした課題をハンドリングしてなんとか乗り越え続けるのがビジネスであり、そして人生だと思っている。何もかもすべてを失い、ゼロになるほどの「金の切れ目」にならなければ、縁も切れないのではないだろうか。

よしんばなにかあって「縁の切れ目」で周囲の人がいなくなっても、その時はまたゼロからやり直せばいいだけだ。「力を失ったらみんな去っていくなんて辛い」と嘆くより、「今ある力を失わないよう、最大限の創意工夫とマネジメントが重要だ」と考えて価値提供できるスキルに努力する。その方が本人にとっても、そして周囲の人にとっても逆に健全で良好な関係を築けるのではないだろうか。

今回の話は冷たくてドライな印象を与えたかもしれない。もちろん例外はある。その1つが結婚相手である。筆者の妻は自分がうだつの上がらない時期から将来の可能性にベットしてくれ、出会ってもう13年になるが一貫してずっと応援し続けてくれた。そういう意味で運命共同体となる結婚相手や子供は例外と言えるだろう。

 

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