圧倒的に高い経験値から到達した「究極の飲食店」

年間お寿司を300回以上食べていたという、自称「日本一お寿司を食べる男」にお会いする機会がありました。

最近はさすがに回数が減ったそうですが、それでも年間200回以上。しかも、日本国内の名だたる名店をほとんど制覇しています。

それだけの回数を食べていると、さすがに繊細な違いが、感覚的にわかるようになるそうです。

例えば、マグロであれば、握りを食べただけで個体の大きさが10キロ単位で7〜8割程度の確率で当てられると言っていました。大きなものになると、味が薄く少し水っぽくなるそうです。

「マグロの達人」とでも言えるような、究極の味覚です。

銀座の三つ星フレンチのシェフソムリエの方も、これに似た能力を持っています。

ワインバーでご一緒した際に、注がれた赤のグラスワインをテイスティングして産地だけではなく、シャトーの名前までピンポイントで当てていました。しかも、まったくのノーヒントです。

どちらも圧倒的な経験値によって、微妙な差異を感じられる境地まで到達しているのです。

しかし、件の「マクロの達人」は、最近ではお店でキロ数を当てるのをやめたそうです。

マグロの味に集中し過ぎてしまい、せっかくの美味しいお寿司を心から堪能できなくなってしまうからだそうです。

そして、最終的に一番美味しい寿司店は?という質問には、店主が来店客にきめ細かな心配りをして、もてなしてくれるようなホスピタリティがあるお店だと語っていました。

緊張しないで、気配りができる親方がいるようなお店です。

圧倒的な経験値を経てわかったことは、飲食店は食材のクオリティや技だけでは不十分で、そこに人間性が必要だという結論。

私は、お店に行くと何も考えずに、ただ気分よく食べてるだけです。

それが、何だか素人っぽくて、幼稚な客だという引け目を感じていました。達人の話を聞いて、それで良いのだと少しだけ勇気付けられました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年11月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。