逆風は人の本性を晒す。
渦中の本人と取り巻く周辺人物たちの双方ともに。
従前筆者は萩生田光一政調会長の動向に注目し期待と信頼を表明してきた。同氏を取り巻く環境は、昨年7月8日の安倍元総理遭難事件を境に潮目が変化し、今や逆風に変わったように見える。特に最大の暴風に晒されている現在、その身の処し方に着目するならば彼に対する信頼は変わらない。更に不透明ながらも将来を予想するならば、これからも変わることはないだろう。彼が矩を踰えることは断じてないからだ。
なぜそこまで言い切れるのか。本稿では私見を述べたい。
「はぎうだ光一の永田町見聞録」
確認できる範囲で2004年5月以来、萩生田会長はこの見出しの表題でブログを20年近く継続している。その人柄の一端を知る上で、また報道されない政界風景の記録としても貴重なブログである。
その最新記事(12月15日)では今回の問題にも言及している。関連部分を下記の通り引用し、それぞれ筆者の所感を述べてみたい。
私の所属する清和政策研究会の政治資金パーティーの会計処理をめぐり、国民の皆様に疑念を抱かせ、政治不信を招くことになった事を深くお詫び申し上げます。
(筆者所感)
→いわゆる“安倍派”は集団指導体制として派閥の長をおいていなかったが、安倍派を中心としたこの問題について、派閥を代表してお詫びを表明したとも受け止められる。この点実質的な責任者の筆頭という実態を表している可能性を感じる。
本件は既に刑事告発がなされ、一部では捜査段階に入っていると承知しており、影響を避ける為にも現時点での詳細な説明は控えざるを得ない事をお許し下さい。私といたしましても、まずは自身の政治資金について事実関係の精査を行い、仮に捜査等があれば全面的かつ真摯に協力をした上で、できる限り速やかに説明責任を果たしてまいる所存です。
→東京地検特捜部も人間の集団である限り、無謬の正義を体現するわけではないが、本件については可能な限り事実に接近して解明して頂きたい。それが今後行われるであろう政治資金に関する改革の出発点となるからだ。
一方、松野官房長官はじめ仲間の閣僚、副大臣が内閣から離れる事になった以上、政策グループの役職はどうあれ、政調会長の責任は同等に、又、それ以上に重いものがあります。この際、責任を共有し党政調会長の職を辞すべく辞表を提出しました。
→潔さ。その説明に多言を要しない。
岸田総理からは意思は受け止める一方、税制、予算等大切な時なのでその出口までは与党政策責任者として仕事を完遂してほしいと要請がありました。最後の仕事としてもうひと踏ん張り頑張ります。
→萩生田会長の凄みを感じる。筆者が萩生田会長を評価するのはその仕事である。いかに重職を担っているのかが伺われる。
任期途中の退任は忸怩たるものがありますし、支えていただいた全ての皆様には申し訳ない気持ちで一杯です。一部報道では総理に反旗を翻したなど面白おかしく解説する方もいますが、グループ全体で迷惑をかけている以上、ここはけじめをつける決断をしたのみです。
(以上ブログより。太字は筆者)
→意識の上で、担う責任範囲が派閥全体に及んでいることがここからも伺われる。当該グループが今後どのような形態になるのか予断は許さないが、ここに次期リーダーたる大きな器を見る思いである。
事実の解明と本質的な改善に期待
読売新聞は社説で次のように主張している。
政治資金規正法は、不記載や虚偽記入の罰則を「5年以下の禁錮または100万円以下の罰金」と定めている。罰金刑であっても、公民権の停止の処分を受け、国会議員の身分を失うことになる。
その重みを忘れて、記載ミスや記載漏れを形式的なミスと軽視してはならない。
今回の疑惑を受け、自民党内では派閥の解消や派閥パーティーの全面禁止、政治資金規正法の抜本改正が検討されているという。
過去にも政治とカネの問題が出るたびに派閥の解消が唱えられてきたが、実現したことはない。(太字は筆者)
萩生田議員には安倍派の実質的なリーダーとして、ぜひとも改革を牽引して頂きたい。
むすび
岸田政権は本件問題に対し、まずは閣僚交代で応えたがまだ終わりは見えない。この問題は次の通常国会での主要なテーマの一つとなるだろう。それまでに事実を踏まえ、十分な実態解明を行っていただきたい。
その過程で与野党ともに政治家として大きな傷を負う議員も出るだろうし、国政の遅滞も招くことだろう。
しかし国際情勢が日々激化する中では、このような国内政治の混乱自体が国益を守るという観点からは深刻なリスクである。かつての「もりかけ疑惑」のように、事後長期間にわたって揉め続け国政が麻痺するような事案になることは避けたい。そのためにも与野党で協力しあって、徹底した調査による実態解明と実効性のある改善策の立案・実施にこぎつけていただきたい。
その推進状況を継続注視するなかで、きっと自民党の党勢の行方や次のリーダーも見えてくるだろう。そしてそれは即ち、日本の次期リーダーということであろう。