カタルーニャ独立への支持を集める前衛機関
スペインの外交活動はスペイン大使館が行うもの。一つの自治州が自らの自治州の為の外交活動を展開するのは憲法で違法とされている。
ところが、スペインからの独立を望むカタルーニャ州政府は世界の主要国にカタルーニャ大使館を開設している。皮肉なのは、その維持費はスペイン政府から支給された資金を充てているということだ。その費用は年間でおよそ3000万ユーロ(36億円)。
カタルーニャの財政は赤字で、州民が負担する課税対象になっている項目は15もある。その数もスペインではダントツである。それでも外交活動を止めない。
更に皮肉なのは、これまでカタルーニャで実施された公式選挙で独立派の政党が獲得した得票数が独立反対派の得票数を上回ったことは一度もない。即ち、独立に反対する有権者の方が独立に賛成する有権者よりも数が多いということである。それでも州政府はいつも独立派政党が政権に就いている。
なぜならば、これまで議員になるための選挙地区ごとの得票数の分配の不釣り合いから、独立派の政党の議員数が反対派の議員数を上回る仕組みになっているからだ。だから州政府は独立派の政党が政権に就くようになっている。
更に追記として、現状のカタルーニャ州政府の財政事情から、仮にカタルーニャが独立したとしてもGDP比で180%近くの負債を抱えることになり、年金もまともに払えなくなると予測されている。
また、カタルーニャを代表する2大銀行もカタルーニャの独立は採算ベースに乗らないとして、2017年10月の独立の為の住民投票を実施した時に本社を州外に移転させた。それに多くの企業が追随してカタルーニャから本社を他州に移動させた。その数は現在までおよそ8700社もある。独立すればEUに加盟できず、EUの協力を得られないからである。
そのような状況下にあるにもかかわらず、州政府は違法であるカタルーニャ大使館を設けて今もカタルーニャの独立の為の活動をしているのである。
一旦閉鎖させられたカタルーニャ大使館が勢いを取り戻している
上述した独立の為の住民投票を実施したあと、すべてのカタルーニャ大使館がスペイン政府によって違法だとして廃止された。しかし、その後それが復活し、5年経過した今、例えば米国にあるカタルーニャ大使館の出費は閉鎖される以前の状態に戻っている(昨年7月13日付「ABC」から引用)。
他の国にも設立したカタルーニャ大使館の活動が活発化している。スペイン政府はそれに対して沈黙を守っている。なぜなら、過半数に満たない議席しかなかったサンチェス首相政権は、カタルーニャの独立支持派の政党やバスクの独立派政党なども味方につけて過半数の議席を維持せねばならないからである。
2017年にカタルーニャ大使館が閉鎖させられた時の数は13か所であった。それから5年経過した今、同大使館の数は21と増えている。その上、スペイン大使館と協力して活動することはない。