どうする、逮捕者を出した自民党

東京地検特捜部は押収した資料と議員らの第一弾取り調べの分析を正月返上で行ったのでしょう。池田佳隆議員が逮捕されました。中堅どころで今回の裏金疑惑では突出して多いとされる3名の中の1人です。逮捕に至ったのは本人が雲隠れし、特捜部の取り調べに対しても否定調だったこともあるのでしょう。

自民党本部 自民党HPより

一般的にあまりにも大きな金額や悪質な罪状の内容ではない限り、政治家は在宅起訴の場合が多いのですが、池田氏は悪質だったわけです。この後が続くのかという点ですが、続くでしょう。中堅議員を一人つかまえるために特捜部がここまで必死になっているはずはありません。

私が特捜部なら戦略としてターゲットを4つに仕切ります。1つは安倍派で裏金をポケットに入れた議員グループ、2つ目は安倍派で組織としてそれを実質的に仕切っていたグループ、これはすなわち事務総長ないし、その実務をしていた人たち、3つ目がその仕組みを大所高所から指示ないし、容認し、パーティー収入と裏金の実態を掌握していたトップ、4つ目が安倍派以外で極端に大きく、許容できない動きをしていたグループです。

仮にこの4つの仕切りに基づき逮捕者、ないし在宅起訴を積み上げて行けば6-7人ぐらいはすぐに行く可能性が出てきています。

東京地検特捜部はなぜ親の仇を取るような行動に出ているのか、といえば私は「恨み」なのだと思います。故安倍氏が2020年に検察官の定年延長に基づき、安倍氏と非常に近かったとされる黒川弘務検事長を検事総長に引き上げようとしたとされます。検察は猛反対です。安倍氏と検察の確執ともされましたが、そのオチはなんと黒川氏が新聞記者と賭けマージャンをして検事長を辞任するという幕引きでありました。週刊文春のすっぱ抜きでありますが、黒川氏が麻雀が好きなのは黒川氏を知る人なら誰でも知っていたことであり、たぶん、内部情報に基づき、黒川氏の検事総長の芽を摘んだのでしょう。ある意味、ものすごい事件だったのです。

その間は検察への風当たりもあり、元気をなくしていたのですが、当時、特捜部を率いたのが現最高刑事部長の森本宏氏です。氏はカルロスゴーン事件、河合夫妻賄賂事件、秋元司IR汚職事件など大型案件を次々やっつけてきており、現在は後任の特捜部長、伊藤文規氏とタッグマッチを組んでいるとされます。森本氏が剛腕型ですので今回の捜査規模を考えても行きつくところまで行く、それが私の読みであります。

仮に大物を含む数名の逮捕者や在宅起訴が出た場合、自民党は池田氏に対して行った「自民党破門」を誰に対しても即座に実行するのか、その行動力が試されます。特に安倍派五人衆の一部、更にはもっと大物の逮捕/起訴となった場合に自民党への国民の失望と圧力は極めて大きくなることは確かです。また34年前のリクルート事件を契機に作られた自民党政治改革大綱は5年近い歳月をかけて作ったものとされますが、結局何も変われなかったと国民に証明したようなものです。

岸田首相が発表するであろう今回の一連の事件に対する対策は「付け焼刃」ともされます。つまりパーティーも派閥も今のままで何も痛みを伴った改革を行わないというわけです。これでは岸田内閣の支持率が一桁になってもおかしくないのです。

では野党は国会が始まる今月下旬からどう対応するのか、ですが、たぶん、噛みつくけれども食いちぎるほどの嚙み方はしないと思います。なぜなら大なり小なり「同じ穴の狢」的なところがあるからだとみています。また、その頃には台湾の総統選の結果が出ており、対中国外交問題が、また4月の韓国総選挙に伴う日本への影響、そして11月のアメリカ大統領選と外交問題が山積するはずで今、国内の足元がぐらついている余裕はないのです。とすれば、国民にすれば不完全燃焼になりかねないのです。

9月の選挙で次期総裁に誰がなるのか、という下馬評も少しずつ出てきていますが、正直、インパクトある人がおらず、岸田氏は次期もやる気満々ともされます。仮にそうであれば消去法で岸田氏が選ばれる可能性は現時点では「それなりにある」とみています。総裁選は国民人気とは全く違うので「お前本気でそう思っているのか?」とご指摘を受けるかと思いますが、今の潜在的候補者を見ればあと誰がいる、と逆に伺いたいぐらいなのです。

こうなると何が困るか、といえば国民にとって政治不在になる点です。ここで私は国鉄がJRになった時と同じ考え方をしたいのです。あの時、国鉄は破綻した、だが、国民の足となる電車は動かねば困るという発想のもと、清算事業と運営を分けました。今回も自民党を旧体制派と新体制派に分けるしかないと思うのです。既に自民党内からも「解党的出直し」の声はあちらこちらから出ています。

また安倍氏のような剛腕型の政治家が目先出そうもないので集団体制で内閣運営できる組織作りも一つのテーマでしょう。また、どれかの党と連立を組む方が刺激になると思います。ただ公明党がその対象かどうかは同党の特殊性を鑑み、もう見直しても良いと思います。

この春、自民党が変われるか、大きく問われるでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月8日の記事より転載させていただきました。