先日、一部の企業が採用活動において「(一般入試や推薦といった)学生の入学プロセスを申告させている」という話がSNSで話題となりました。
良し悪しは別にして、そうしたニーズは昔からありますね。
企業が「学生がどうやって入学したのか」というプロセスを知りたがる理由とはなんでしょうか。そもそも、それを知ることに合理的な根拠はあるんでしょうか。
入学手段の違いを企業がどう見ているかは、意外と語られてこなかったテーマだと思いますね。
いい機会なのでまとめておきましょう。
企業が学生の入学プロセスを知りたがるワケ
これから採用する人に担当してもらうジョブが既に決まっている場合、そのジョブにマッチしたスキルがあるかどうかを選考で判断することになります。
でもみなさんご存じのように、我らが日本企業では新卒一括採用で採用する総合職には会社都合で何でもやってもらうことが大前提です。
何をやらせるか決まっていない状態で人を選ばなきゃならんとなると、当然ながら選ぶ基準としては「何でもできるポテンシャルがあるかどうか」が基準になるわけです。
これがいわゆるポテンシャル採用と言われていたものですね。
ではそのポテンシャルの有無はどう判断していたかと言えば、大学入試という共通の土俵の上で結果出したかどうかでチェックしてきたわけですよ。
だから、従来の新卒一括採用では学歴が非常に重視され、21世紀の今でも“学歴フィルター”みたいなものはしっかり存在しているわけです。
【参考リンク】「学歴フィルターはあります」──関係者が次々に明かす、日本のヤバい採用現場
一方で、ここ20年ほどで状況は大きく変わってきています。
少子化が進む中、各大学が学生数を確保するために総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜といった入試プロセスの多様化を進めてきた結果、いまや入学者における一般入試合格者の割合は5割を切っています。
つまり、学歴云々以前に、大学入試という共通の土俵にそもそも上がっていない人が半分以上混じっているわけです。
【参考リンク】受験生2人に1人が「年内入試」で大学へ 「探究学習」でさらに拡大か
これは“ポテンシャル”という、そもそもよくわからない基準のみで選考している人事の側からすると、恐怖以外のなにものでもないですね。
自分の知っている〇〇大学出身の人材と、目の前に座っている〇〇大学の学生は、肩書こそ同じでも頭の中身は全く別物かもしれないわけですから。
そして、そんな相手に「70歳までの安定した超長期雇用」を保証するかどうか判断しなければならないわけですから。
そりゃどういうルートで大学に入学したかを知りたくなるのも当然ですね。
というわけで、20年くらい前からそうしたニーズが常に存在していたのは事実です。
あと、入試プロセスをチェックするにしても、普通はある程度選考が進んだ後で面接の中でそれとなく確認したりするのが普通ですね。
エントリー段階で申告させている会社は、その点を非常に重視していて、早い段階でなんらかのフィルターをかけているということでしょう。
と、ここまで読んで「そうか、じゃあやっぱり一般入試が一番だな」と思った人は多いかもしれません。
確かに、今でもそう考えている企業は少なくないです。でも、最近はそうではない企業もじわじわ増えています。
ちなみに、もし筆者が採用責任者で、応募学生の入試プロセスがわかっていたとして、どのグループを優先的に面接に呼びたいかと言われたら、学校推薦型選抜ですね。
時代は刻々と変わり続けています。
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以降、
- 企業はどういうスタンスで入試をとらえているか
- これから企業が見るポイントとは
Q:「小さな政府とは弱者に厳しいことなんでしょうか?」
→A:「筆者は貧困にはあまり関心ないのですが貧困ビジネスする奴は嫌いです」
Q:「同期がネットワークビジネスにはまっています……」
→A:「副業として認められるかどうかは、副業の内容と本人次第です」
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