素直にアドバイス通りできるのは優秀な人だけ

黒坂岳央です。

「優秀な人ほど人からのアドバイスを素直に実践して成功する」という話がある。逆をいえば、うまくいかない人ほどアドバイス通りにやらず、最初から自己流でやって失敗するということでもある。そして世の中、どんな分野でもうまくやれる人は少ない。つまり徹頭徹尾、素直にアドバイス通りやれる人は優秀な人だけという論法が成立する。

自分は仕事柄、アドバイスをする事が多いのだが、実際この話は正しく正しいと感じる。少なくとも力量に差があるなら、初心者は上級者のアドバイス通りにやることで成功率は高まるだろう。だが、アドバイスどおりに実践できる人は本当に少ない。なぜだろうか?それはアドバイス通り、素直に実践することは難しい3つの壁が存在するからだ。

itakayuki/iStock

理由1. リテラシー不足

上級者のアドバイスを言われたまま、正確に理解するには壁がある。よく会社などで「言われたことしかできないのか」とか「指示待ち人間」といった相手を下に見る発言があるが、実は言われたそのままを正確に実行できるのはすでに上位層の優秀な人なのである。加えて、誰しも新しい仕事、新しい挑戦をする上では右も左もわからない状態なので、まずはベテランの仕事をそのまま受け入れ、慣れてきた段階で殻を破って人なりのオリジナリティや改善プランを取り入れていくステップを経る。

翻って仕事ができない人は、相手の指示通り仕事ができない。「A→B→Cの順番で」と言われているのに、勝手に自己判断でEを入れたりBの手順をスキップしてしまう。なぜそうなるのか?理由はリテラシーで説明がつく。

単語としては意味を理解できても、単語が集合して文脈になった瞬間に本来の意味や相手の意図がまったく分からなくなり、自分が理解できる領域の解釈をして指示を無視した仕事になってしまう。日本人の識字率はほぼ100%だが、文脈のある「文章」を正確に読めない人はかなり多い。OECD加盟国を対象としたリテラシー調査によると、ざっくり日本人の4人に1人は文脈理解ができない、または苦手なために相手から受けたアドバイスを正確に理解し、オリジナルのまま実行するということができないのだ。

解決策としては辛抱強く何度もアドバイスを繰り返し耳に入れるしかない。失敗を繰り返す過程で、本人も間違いに気づいて徐々に軌道修正がなされる。

理由2. 結果よりプライドを優先

2つ目の理由は、挑戦をする上で結果を出すよりプライドを優先するためである。

たとえば相手から仕事の手順を教わる場合、教え方が悪いために指示が理解できないということが起きる。そうした時は「すいません、今のこの話が難しかったのですが、こういう理解でよろしいでしょうか?」と手順の正確性を確認するべきである。理解が違えばその場で軌道修正をすることで、教える側も「ごめんごめん、今の話は分かりにくかったよね」と教え方の矯正がなされる、これが理想だろう。

一方で世の中には結果よりもプライドが第一優先になってしまう人がいる。「わかりません」「教えてください」が言えない人だ。そうした人は誰かからアドバイスを受けるという立場に上下関係があると解釈し、屈辱と感じてしまいがちだ。そのため、理解できない箇所をわからないと言えず、理解のブランク箇所は自己判断で進めるから失敗してしまう。だが誤りの指摘を受けても素直に聞けず、「あなたの注意喚起が足りなかったからだ」と怒り出してしまう。

挑戦をする上では結果は全てに優先する。プライドはしっかり仕事ができるようになるまでは引っ込めておくべきだろう。

理由3. 自己を過大評価

あらゆる挑戦をする上で、初心者は超がつく高望み状態である。だが、本人には知識や経験がないために、自分の現在地や高望み状態と気づくことはできない。ダニングクルーガー曲線によると、「バカの山」と呼ばれる段階におり「この仕事は1ヶ月で終わらせよう」などと考えてしまう。1ヶ月という見積もりには何の根拠もないというのに勝手に自分で期間を決めてしまうのだ。

引用元:イラストAC

アドバイスをしてくれる相手の話は、表面的に聞いて自己解釈と高すぎる期待値のまま始めるから当然のように失敗する。自信満々に無根拠で走り出し、そしてたった一度の失敗で自信を失い「絶望の谷」と呼ばれるステージに落ちて挫折してやめる。

基本的に人は失敗して自信を失っているタイミングまでは、真摯に他人のアドバイスに耳を傾けることはしない。だから話を聞けず自己流で走っている場合は本人が失敗するのを待ってからアドバイスをする方が良いこともある。

しかしながら、過去に色んな挑戦をしてきた経験者は違う。このダニングクルーガー曲線が頭に入っているから、やる前から真摯にアドバイスを聞き、まずは先人の知恵を踏襲する合理的な道を選択できるのだ。

人のアドバイスを聞く、というのはアドバイスをちゃんと聞けない人ほど軽く考えてしまいがちだ。「自分はもうわかってる」「聞けている」と思っているが、頭の中を覗き込むとわかったつもり、理解したつもりになっている状態である。であるが故にアドバイスを1聞いたら、それ以降はすべて聞き流して2以降のアドバイスはすべて捨てられている状態である。

一番いい改善策はとにかく相手のアドバイスを何度も反芻することだ。自分は未知の領域を学ぶ時は、記事や動画はメモを取りながら頭に入るまで何回も何回も反復する。他人にカンペ無しで説明できるくらい繰り返してインプットする。そうしないとアドバイス通り実践することなど不可能だと理解しているからだ。アドバイス通り実践するのは、一見簡単なようで実は優秀な人にしかできない芸当なのである。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。