予約が取れない超人気鮨店は値上げすべきか?

下丸子にあるお寿司屋さんにお邪魔しました(写真)。かれこれ10年以上通っているお店です。

以前は、直前に予約をして気軽に出かけられるお店でしたが、価格の安さと高いクオリティが口コミで大人気となり、今や予約困難店になってしまいました。

食べきれず、お土産に持って帰る人がほとんどという位のボリューム。高品質の食材を使い、原価率は50%を超えていると思われます。しかも毎回新しいお料理が提供され、進化し続け飽きることがありません。人気が出るのは当たり前と言えば、当たり前です。

ちなみに現在は、来店して次回の予約をすると、最短で来年3月以降になります。何と1年2ヶ月待ちです。

カウンターだけのわずか7席で1日2回転。お休みは週1回ですから、年間300日営業したとしても、4200席しかありません。

親方にとって悩ましいのは、リピーターがほとんどで新規のお客さんを取れないことです。常連さんも大切ですが、新しいお客さんが来ることで刺激にもなり、客層を広げることができます。

供給を圧倒的に凌駕する需要をコントロールするためには、価格調整をするしかありません。実際、原材料費の値上がりもあって少しずつ値上げをしていますが、それでもまだ激安状態です。

例えば、価格を今の1.5倍にすれば、来なくなる人もいるでしょう。需給が調整されて予約は取りやすくなりそうです。

多くの人気の鮨店は予約が取りにくくなると、価格を上げていきます。こちらのお店の場合、価格の上昇余地はまだかなりあります。しかし、職人気質の心ある店主であれば、そんな拝金主義の経営には心が痛むはずです。

また、価格を上げて需要が想定以上に減ってしまい、現在の経営状態が維持できなくなるのもリスクです。値上げには勇気も必要です。

値上げによって常連が来なくなるのも困ったことですが、予約が取れな過ぎて常連客の足が遠のくリスクも考えると、1,000円単位で少しずつ段階的に値上げしていくというのが現実的な対応策だと思います。

来年3月にまたお邪魔する時にはいくらになっているのでしょうか?


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。