お説教好きオジサンの心理

黒坂岳央です。

記事や動画をしている立場なので自分は日常的にお説教を受ける。自分はこれまで相手から求められて建設的、生産的なアドバイスはしても、お説教は一度もしたことはないから彼らの心理はよく理解できなかった。

だが、これまで数え切れない数のお説教を投げられてきた経験から、お説教の規則性が見えてきたので持論を展開したい。

Masafumi_Nakanishi/iStock

お説教好きな人の特徴

世の中にはお説教が好きな人種が存在する。箇条書きで列挙すると概ね次のような属性が多いと感じる(全てなどと極論は言っていないので念のため)。

・40代以降の中高年男性
・役職持ちサラリーマン
・非専門家

その逆に若い人、女性、起業家や投資家、高度な専門家からはゼロではなくとも、上記の属性に比べて相対的に少ないという感覚値がある。

つまり、この属性に該当する人たちの一部は、ある種のお説教欲求に突き動かされやすい原動力が存在するといえる。

お説教がやめられない3つの理由

お説教には何もメリットはないと思うのが普通である。時間と労力を差し出し、顔も知らない赤の他人に意見(多くはダメ出し)をする。失うものはあっても得るものはない。仮にお説教が的を射ていた場合でも、その意見で利するのはあくまで言われる側であり、言う側ではない。

人間を含め、あらゆる生物は得のない行動はしない(自分にとって)。つまり、一見メリットがないように見えるお説教も、彼らなりにそこから利益を得ていると推測することが可能だ。一体、それは何か?

1つ目は承認欲求だ。承認欲求はすべての人間が生まれ持った本能であり、本来は健全な解消をするための原動力として機能する。その1つが仕事だ。仕事は経済的利益を得るための手段に留まらず、利害関係者から感謝の気持ちを受け取ったり、称賛の声を得るために頑張る。本人は自分自身のために仕事を頑張るのだが、その結果として周囲や社会も幸せになる。これが理想の形だろう。

問題は本人が承認欲求をうまく消化できない場合に起きる。たとえばキャバクラなどで女性スタッフに対して「こんな仕事をすると親が悲しむよ」といった説教をするシーンがドラマなどで描かれることがあるが、これは承認欲求欠乏症の1つの症状である。自らの意志で来店しておいて、サービスをしてくれる相手に説教をしてしまう。この異常性と滑稽さに本人が気づかないのは、それだけ本能は客観性より圧倒的に強いことを示している。

2つ目は支配欲だ。子孫繁栄本能から男性は女性に比べて統計的に支配欲が強い傾向があるとされる。ブラック企業の強権的な経営者とか、独裁国家のトップがいずれも異常なほど支配欲が強い人物が存在するが、いずれもテストステロン値が高そうな男性である事が多い。

説教をすることで、自分は相手より優位な立場という感覚を得られる。そのため彼らは年下や店員さんなど、自分が力関係が上だと確信が持てる相手に強く出る傾向がある。だが思わぬ反撃にあい、相手が強いと感じるとすぐさま撤退戦略を取って、その後は大人しくなる事が多い。

3つ目は知識不足である。筆者に説教をしてくる相手は強い思い込みで事実とは乖離した理解で「お前が間違っている」という指摘をすることが多い。この現象は多くの場合、ダニングクルーガー曲線で説明できる。

引用元:イラストAC

初心者ほど「わかったつもりになってしまう」というバグを人間は抱えている。そのため、素人が専門家へ安易に挑戦するのは結構危険なことなのである。SNSでも素人が専門家へ突っかかって圧倒的な知識と経験に裏打ちされた反撃で返り討ちに合って恥を晒すということが日常的に起きている。相手が一見、与し易い優しそうな雰囲気が出ていてもそこは専門家、決して舐めてかからない方がいいだろう。

お説教好きは論理的にメリットがない。周囲から嘲笑されるし、何より時間のムダである。限らえた可処分時間は赤の他人に説教することではなく、自分を高めるために使う方が良いだろう。

獲得した知識や技術は基本的に永続的なリターンをもたらし、それを蓄積することで説教などせずとも仕事や学業でパフォーマンスを出すことができ、結果として健全な承認欲求の消化につなげることができるだろう。承認欲求は一生続くので、人生の早い段階で健全な消化方法を獲得しておくのが良さそうだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。