「医療費窓口負担一律3割」は社会保障費削減に大きく寄与する一手だ --- 九住 龍介

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勤務医です。

一律3割と高額療養費制度の見直し(一律化が望ましい)を含む医療費自己負担額の適正化は、最優先に行うべき施策と考えます。本来不要な医療需要の発生を抑制することによる社会保障費削減効果は計り知れません。

現行の過剰社会保障制度は過去の負の遺産であり、成立した時代と比して人口動態や国民負担率は大きく変化しています。これほど放置されているのは、政党にとっての主な票田世帯を優遇する制度であるためでしょう。

現状は、破格の自己負担である高齢者と特別扱い世帯により、医療資源が不当に浪費されています。 「無料~激安なら貰っておく、やってもらう」という意識は、人間なら誰しも持つものです。

悪徳開業医においては、本来不要な低リスク低効果医療のばら撒きが事業として成立しており(サロン化)、社会補償費増大の一因となっていることは明白です。

一方、総合病院においては、入院により優遇世帯が受けられる特典多数(自己負担額<<<入る年金と手当金の不等式による家計黒字化=寝たきり大黒柱、病院に預けることによる過剰な安心安全と精神的安寧、社会サービス調整、果ては訴訟換金チャンス)のため、年齢・ADL・認知機能を鑑みると不適当と思われる積極的治療と入院を希望する患者や家族が後を断ちません。

多くの勤務医が懇々と説明していますが、「治療処置しないこと」に関する後ろ盾(医療訴訟判例、行政の言及、ガイドラインの記述など)が存在しない日本で、患者側の希望と反対の方針を押し通すのは困難です。方針は現場に丸投げである一方、医療訴訟では厳しく追及されています。

救急車含め無料〜激安ゆえに殺到し、モラルハザードも多く、日本では年齢・ADL・認知機能を鑑みたトリアージが許されていないため、多数の医療資源を彼らに注がねば、次の患者が診れない状況になっています。先着順の制度において、病院にかかる閾値の低い、激安かつ余暇もある優遇世帯が有利となることは必然です。

上記の各種特典から、入院後は転退院に協力しない者も多く(「何かあったらどうすんだ」と身体を盾にしてごねる)、お願いベースで説得するのが日常業務です。

しかし、労してベッドを1つ開けても、いつも通り多疾患併存要介護認知症高齢患者が殺到するだけです。現役世帯が診療を受ける機会は様々な意味で奪われており、医療現場も逼迫・疲弊しています。

高額療養費制度も極めて不平等です。高齢者や特別扱い世帯が、抗癌剤や生物学的製剤といった最先端の高額医療を躊躇なく受け恩恵を享受する一方、多く納税している現役世帯は、自己負担額から最良の治療を諦める患者が少なくありません(特に政府の定義する「上位所得者」の群は相対的に非常に高い)。いつも苦虫を噛み潰しています。

また、リビングウィルやAdvance Care Planningの普及率の悪さ(自身や家族の命と向き合う意識と覚悟の低さ)についても、自己負担額が関与しています。

誰に聞いても「死ぬ時はポックリが良い」と言うものの、無料~激安で医療が受けられるので、「いざとなったら大きな病院にかかってできるだけのことはやって貰おう。今は考えられない」と、安易に議論や決断を先延ばしにし、土壇場を迎えて医療資源が浪費されるケースが非常に多いです。老人虐待同様の延命の始まりにもなり得ます。

自己負担額の適正化により、老いや終末期の在り方について真剣に考える人も増えるでしょう。金が絡まない教育や啓蒙の効果は限定的です。延命治療を受ける高齢者の姿は見るに耐えません。彼らは後悔しても発信の術を持たず、文字通り体と引き換えに「寝たきり大黒柱」を営んでいます。

現状は本当に異様です。

牛丼チェーン店(より更に激安~無料)で松阪牛食べ放題の状態です。自己負担の低い者で溢れかえるので、真面目に金を払う現役世帯が、順番待ちと貧困のために結局食べられないことがよくあります。コロナパンデミック含め災害時、過剰社会保障制度のために若い尊い命が失われてきましたが、一向に制度が見直されることがありません。

責めるべきは個人の倫理ではなく、元凶たる過剰社会保障制度です。自己負担の適正化は、本来不要な医療需要を大きく削減し、日本の総貧困化・加速する少子化・老人虐待同様の延命治療・医療現場逼迫による現役世帯の診療機会減少など、様々な社会問題の改善に繋がります。

他にも問題は山積していますが、自己負担の適正化を最優先かつ早急に行い、伴う医療需給バランスの変化を見ながら、他に手をつけてゆくのが賢明と考えます。また、介護保険についても同様です。

今回、これに切り込む政党が出現したことに感銘を受けています。今後とも、微力ながら自分にできることをしていきたいです。

九住 龍介 救急科専門医、集中治療科専門医
過剰社会保障制度を憂う急性期病院勤務医です。慢性期病院でも働いていました。

 


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