フランスだって苦しむ少子化問題:優等生だったフランスの急落ぶり

2023年の日本の出生者数の速報が発表になりました。外国人を含むその数は前年比マイナス5.1%の75万8631人。数字を先に並べると、死亡者数は159万503人、差し引き、人口減数は83万1872人であります。また婚姻数が48万9281組、離婚数が18万7798組となっています。

人口減少のペースは近年のトレンドをきっちり守っており、人口予想を行っている国立社会保障 人口問題研究所の予想は過去ずっと外しまくっております。つまり、使っているデータの因子が違うのだと思うのですが、それを見直さないのか、あるいは意図的に衝撃的数字となるのを見せないようにしているのかのどちらかだと思います。通常、この手のデータ解析ではいくつかシナリオを作るのが一般的であり、同研究所もワーストケースのデータは持っているはずです。但し、それをどう斟酌するかは研究所とそこに繋がる政府であるとか、様々な関係者の意向が反映され、また忖度も生まれることからせっかくのデータが恣意的になる可能性もあるのでしょう。

さて、人口減に悩む日本はフランスに学べと何度も言われてきました。ですが、そのフランスも人口増加率の減少に悩んでいるのです。同国の合計特殊出生率は1993年に1.66まで低下したのですが、そこから様々な政策を実施し、2006年には2.03まで回復したことで出生率の優等生として日本は崇めたのであります。

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ですが、同国の優等生ぶりは2014年まで続いた出生率2.00台を維持したところまで。15年以降は出生者数減が進み、2023年の最新データでは前年比6.6%減の1.68となっています。ちなみにグラフで見ると15年以降急落で出生者数は私の計算で2010年から23年までの13年で18.5%下落しています。ちなみに日本の同期間の下落率は29.2%となりますのでもちろん、フランスの方がよいのですが、グラフからはそれまで優等生だったフランスの急落ぶりが目に付くのです。

フランスが優れているとされた理由に社会保障サービスの良さと共に婚外子が多いとされ、様々な恋愛の仕方があるフランスならではという記事がついこの前まで並んでいたのは皆さま、ご記憶にあるでしょう。バッサリ斬りますが、それが主因ではなく移民がキーだと思います。2009年とやや古いデータですがフランスの非移民と移民の出生率の数字があります。それぞれ、1.91と2.77となっており、合算して2.00というのが同年の数字です。もちろん、非移民=純フランス人の1.91という数字も立派ですが、2.77という移民の数字が驚異的であるともいえるのです。そして私はその主流がムスリム(イスラム系)であり、「産めよ、増やせよ、イスラム信者」の通りになっていると理解しています。

イスラム教徒の出生率がキリスト教徒や仏教徒に比べはるかに高いのことは周知の事実でありますが、それと同時に移民することによる「出生意欲」」に私は着目しています。つまり、今まで住んでいた過酷な日々の生活からフランスという先進国に移民した結果、そこで同じ血統の子孫を増やしたいという種の保存の法則が効いているのではないか、とみています。埼玉川口でクルド民族のことが話題になりますが、基本的に民族は集団化し、子孫繁栄を試み、プレゼンスを出すのが一般的で、私の知る限り日本人とか英国人は集団化せず、バラバラであります。

東アジアで人口減に悩む地域、韓国、台湾、中国、日本などは何処も移民に一定の制限があり、人種の交わりが起きにくいところであります。フランスが出生率で優等生だったのは婚外子もあるかもしれませんが、それより移民大国であるというのが真相でしょう。故にアメリカも出生率は高いのです。これである程度は説明がつくと思います。

では非移民である純粋な国民による自助努力で人口は増えないのでしょうか?ずばり、増えるとは思えません。理由は何度もこのブログで討議しているので皆さん、お気づきだと思いますが、日々の生活が楽しいから、これは大きいと思います。次いで、女性の地位向上と社会進出が少子化を後押しています。但し、これを政府は言えないのです。なぜなら女性の社会進出は日本政府が長年に渡って目指ししてきた政策であり、人口減であるゆえに重要な労働力としても確保しなくてはいけないのです。なので政府の少子化対策という名の子育て支援を通じて女性の負担を軽減させることに傾注するのは「女性には是非とも社会進出して頂き、無理を承知ながらもご結婚、ご出産頂き、その後も継続して仕事を頂きたいです。いろいろ社会整備は致します。by 日本政府」ということなのでしょう。

人口の増減は機械的に調整できるものではありません。メンタルと同時に社会全般の流れ、それ以上に人間という個体が種の保存の法則に基づき、見えない神のチカラにより導かれるものであると妙に非論理的な言い分になってしまいますが、案外そういうことだろうと考えています。故に戦争が起これば出生率は上がったりするわけです。(ウクライナで人口が激減中なのは男性を国の外に出さない悪政を敷いており、家族がバラバラだからでしょう。休戦するとかなりの出生率増になるはずです。)

「赤ちゃんはどこからきたの?コウノトリが運んできたんだよ」というアンデルセンの童話の元ネタは子作りを夏至の頃に行い、春が来たら別の意味でCome on baby!ということなのでしょう。矢沢永吉様、失礼しました。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月1日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。