平均思考だと貧しくなる理由

黒坂岳央です。

一昔、「平均思考」という言葉が流行った。統計的な平均値を意識して、それより下はだめで、上は合格といった考え方もこれに入るだろう。日本人は学生時代は偏差値、ビジネスマンになると年収や資産額などで平均思考に縛り付けられてしまいがちだ。平均以下の数値をなんとか平均値に移動させて安堵する人も多いのではないだろうか。

しかし、筆者はこの平均思考がどんどん人を貧しくさせると思っている。個人的見解を述べたい。

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平均的な人は存在しない

誰もが何らかの能力、人格、資質で優れた点、劣った点を持っているのが普通であり、そもそもの前提に「平均的な人間」はほぼ存在しない。よく聞く結婚相手に望む条件として「平均年収、平均身長、学歴などをかけ合わせるほどどんどん候補者が減っていき、”普通の人”はレアになってしまう」という話がある。1つの能力だけ見れば普通でも、複数の条件では選別が進んでもはや普通ではなくなるのだ。

そう考えると、世の中に「平均的な人」は本来いない。良くも悪くも、誰もが異常値を持っている。大事なのは得意な分野を上手に活用し、苦手な分野がなるべく表に出ないようにする工夫なのだ。たとえば筆者はチームワークが苦手なので、サラリーマンの世界では普通以下のパフォーマンスであることも多かったが、一人でできる仕事は普通以上のパフォーマンスを出せるものもある。この場合、「チームワーク、ソロプレイの両方で平均値より高い人材」を目指す必要はなく、どちらが強い世界で戦えばいいのだ。

平均だと貧しくなる

昨今、日本では格差が広がっている。富むものはますます富み、その逆も進んでいる。健全な資本主義社会において、格差が広がることは自然な結果でありそれ自体をあまりに忌避するともはや社会主義になるのだが、当事者にとっての問題としては自分が貧しい側にならないことである。

平均値が昔に比べて貧しくなるということは、平均値より少し上で現状維持となる。そのため、「自分は平均的だから安心」という平均思考を持つと貧しくなってしまう。また、最大公約数的な解は生成AIの得意分野であるため、誰でも知っている知識、誰でもすぐ調べたら出てくる「平均的知識」を持っていてもなんら付加価値にならない。AIが収集できず、再現も難しい専門分野に特化した知識、技術こそが武器になる。幅広く、何でも平均的にできるビジネスマンではなく、たった1つの分野を磨き上げた非平均的人材を目指すことが重要になるだろう。そのためにはまず、自分の持つ異常値を冷静に認識することなのだ。

口を開かず、黙っていると多くの人は「普通の人」という顔をしているが、その実全員が必ず(いい意味と悪い意味で)平均値から外れた異常値を持っている。平均値を目指すのではなく、いかに異常値を上手にハンドリングできるかがますます重要になるだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。