進むか、日本の安全保障:アメリカが日本を守る理由が何処にあるのか?

安全保障と聞いただけで興味が失せる人がほとんどでしょう。「え、何?日本って安全じゃない」と。安全はタダで手に入るというのも良く聞かれることです。「だって日米安全保障条約があってアメリカが守ってくれるじゃない」と。「うるさい飛行機が離着陸する場所だって日本は提供しているんだし」というのが関の山。

では世の中、そんなルール通りにコトが進むのか、教科書で学んだことが将来にも通用するのかという疑問は挟まないのでしょうか?「そんな難しいことは偉い人がやってくれればいいのよ」では済まされないのです。

一時期の緊張感はやや緩んだと思いますが、中国による台湾侵攻の危機、併せて日本の領域にも大いなる影響が出るのではないか、という話は消えたわけではありません。あるきっかけでそんなことはすぐに起こり得ます。北朝鮮がミサイルを打ち上げ花火の如く飛ばしていますが、「どうせ、韓国が標的なんだろう?」と言ってしまうのはあまりにも無謀。例えばそのミサイル発射実験も失敗は当然あり得るわけで日本の上空を飛び越えるはずが日本のど真ん中に落ちてしまうこともありえます。その時、誰にどう文句を言うのでしょうか?

北方領土。かつての日ロ返還交渉対象地だったものは既にロシアが極東の前線地として開発を進めています。なぜ?多分、日本の目と鼻の先に銃を向けることで威嚇するのでしょう。なんのために?日本が政治的に憎いわけです。ロシアが経済的に落ち込めば日本とのディールが必要なのですが、これだけ経済制裁をしてもロシアの懐が痛んでいるようには見えません。多分、アングラ経済が非常に発達しているのでしょう。ロシアは強気でいつ何が起きてもおかしくない、そういう話です。

「アメリカが守ってくれないの?」という話ですが、安全はお金では買えないこともあるのです。アメリカが日本を守る理由が何処にあるのでしょうか?政治家と官僚が作った書面にはそうありますが、いざとなれば生身の人間がそれを実行するのです。アメリカが戦後の戦争で目立った成果を上げていないのは思惑と実態が違うからです。将来、何かの事態が生じて、在日アメリカ軍が日本を守る行動に出たとしても最後は日本が前線に出ざるを得ません。アメリカはせいぜい後方支援に徹する程度でしょう。

岸田首相とバイデン大統領 令和5年1月の訪米 首相官邸HPより

今後の戦争のスタイルはウクライナの戦い方と近いものになると私はみています。先日、マクロン大統領が派兵の可能性を述べたら他国から総スカンだったのは共同防衛の手段が武器や資金提供はあっても自国の民に血を流せとは言えなくなったのです。これは先の大戦から最も大きく変わったところです。よって武器や兵器の開発競争は2つ意味があり、1つは相手を威嚇すること、もう1つは国民の血を流さず最も効率的に戦争をする手段ということです。なのでドローン兵器は絶好の武器であるとも言えるのです。

日本の安全保障はその原点を理解しないと国民の理解は進まないでしょう。経済安全保障保護法案が今国会に提出される見込みです。これは日本でよく見られる海外への情報漏洩を防ぐことが盛り込まれています。重要な安保情報を民間と共有する際、民間企業、研究者といった対象者は「適合事業者」であり、かつ個人個人が適正評価チェックを受ける必要があります。このチェックには犯罪歴、家族を含む国籍、更には飲酒癖や懐具合も見られます。「そこまでするの?」と感じる方も多いでしょうが、それはその業務に従事する人の忠誠心の問題でありそれは今や世界標準になりつつあると考えています。

日本人の技術者が中国などに三顧の礼で迎えられる話はよくあります。あるいは研究者が日本の大学よりも中国の方がはるかに多額の予算をくれることで喜んで中国に渡るケースもあります。もちろん、全てがダメという訳ではないのですが、見境なく日本の知見や無形の財産を報酬見合いで引き渡す行為に歯止めをかける必要があるのです。いわゆる「頭脳流出」と称されるものですが、その中でも特に安全保障上重要だと思われるものに厳しい歯止めをかけることが必要になったということです。

残念ですが、世の中は日進月歩であるように30年前にOKだったことやその当時の常識は今はすべからく通じないのです。なので、人々の立ち位置や考え方も日々更新していく必要があるのです。コンピューターのソフトウェアが更新され、皆さんのiPhoneが進化しているのに安全に関する思想は戦後一貫して変わらず、という訳には行かないのです。

日本版NSC(国家安全保障会議)が発足して10年が経ちました。機能していると思います。そして安全保障の基本はDIME、つまり外交(diplomacy)、情報(information)、軍事(military)、経済(economy)であります。が、日本は情報の中のインテリジェンス、要はスパイと経済の部分が十分ではないとされ、上述の経済安全保障保護法案はその一環であると考えています。

日本人が肝に命じなくてはいけないのは自分のことは自分で守る、これが原則だという点です。「自衛官がいるじゃない」という他人任せではダメで各自が意識するようにならねばならない時代になったのだということかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月13日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。