子供のIT教育にタブレットを使わせてはいけない

黒坂岳央です。

ICT教育の一環として、あちこちの学校でタブレットを使うのが普通になった。筆者は保護者として授業参観に出かけるが、その授業でタブレットを活用しているのを見る。たとえば事前に縄跳びや鉄棒などの様子や校内の植物を撮影して発表する、といった活用法である。中学、高校でもさらに発展した活用法を教えるのだろう。

だが本当にタブレットはIT教育になるだろうのか?筆者はタブレットではなく、最初からPCを使う訓練を若いうちから積んだほうが良いと思っている。

maruco/iStock

仕事はタブレットではなくPCを使う

社会に出てIT機器を使う場面を考えると、圧倒的にタブレットよりPCの比率が高い。タブレットでも簡単な文章作成や問い合わせ回答は可能だし、営業マンがクライアント先でタブレットを使ってプレゼンをする場合もある。

しかし、肝心の成果物の多くはPCで制作し、タブレットは単にその成果物を映すための実質的なディスプレイになっているケースが多いのではないだろうか。複雑な計算、資料の作り込み、デザインや動画編集、社内のファイル共有、管理システムなどほとんどはPCで処理をする。どの会社のデスクワークでも「仕事のすべてをタブレットだけで完結」は難しいが、PCならあり得る。本質的にタブレットは受信機、PCは創作機という違いは大きい。タブレットに熟練しても消費者から脱してビジネスマンへ転換するのは難しい。

将来、仕事で使うのはタブレットではなくPCである。PCを触らないまま会社で働き始めるのが問題なのでIT教育をしなければいけない、ということだと思うがタブレットの活用はその問題を解決するのだろうか?

PCのキーボード入力に慣れよ

スマホでもタブレットでも、入力は画面タッチである。一言で済むメッセージ入力、たとえば「了解」とか「ありがとう」くらいなら事足りる(もっとも、これは絵文字、リアクションマークで代替する事が多いが)。ある程度触って慣れておけば、人によって入力速度、正確性は差がほとんどつかない。

だがPCは違う。PCはフルキーボードの入力が必要になり、タッチタイピングの有無やショートカットキーの熟練度で生産性は飛躍的に高まる。手前味噌のようでおこがましいが、一時期、タイピングソフトをやり込んだこともあり筆者はキーボード入力はかなり速い自負がある。オンラインのタイピングソフトでは上位100位以内に入る程度である。ショートカットキーや左手デバイス環境も整備しているので、生産性は自分でもかなり高いと思っている。

不慣れな人との差は誇張なしで数倍、下手をしたら10数倍の差があるかもしれない。しかもその生産性の違いは永遠に続き、自転車の操縦と同じで技術は不可逆的である。そうなると時間の経過で熟練した人とそうでない人とで、どんどん成果物の量に差が出る、これは将来的に取り返しがつかないほどのビジネス力の大きな差になる。フルキーボードの取り扱いは一朝一夕で身につかないので、タブレットよりもPCのキーボードに早い段階で触れておいた方がいい。

筆者の長男は小学1年生からタイピングソフトをやらせているが、すでにタッチタイピングができるようになった。少しずつショートカットキーも覚えている。

IT教育は何のためにやるのか?それは将来的に仕事で活用するためである。だが仕事の現場で使うのはタブレットではなくPCだ。でもタブレットばかりでIT教育をする。これでは何の教育かがわからない。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。