誰にでも起こりうる依存症、水原一平通訳解雇に思うこと

マスコミは格好のネタを見つけた形となり、ハチの巣を突っついたような騒ぎになっています。水原一平氏のギャンブルにまつわり、ドジャースを解雇となりました。

私がこのニュースに接して一番先に思ったことは大谷さんへの影響と水原氏の家族への影響であります。本人の件は別次元の話です。これを書いている時点で十分な情報が揃っていないのですが、水原氏がESPNで語った内容と大谷氏の弁護士が声明を出している内容が食い違っていることから大谷さんへの本件捜査の影響はあるとみています。

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あくまでも現時点での限られた情報をベースにするなら水谷氏が大谷さんにギャンブルで負け続けて金がないので援助してほしいと依頼したこと、大谷さんがそれを受け、ブックメーカーの口座に自ら送金手続きを何度かした話は正しいように見えます。なぜなら送金が大谷氏から行われており、それができるのは大谷さんか水原氏が大谷さんの口座アクセスを知っていたかのどちらかしかないのです。

そして北米も口座アクセスは当然、二段階認証でたいがいはスマホに届く二段階目の暗証番号を入力しないとネット口座に入れないのです。だとすれば水原氏がいくら何でも自分のスマホに暗証番号が届くよう仕向けたとは思えず、大谷さんが自らの手で送金をしたものと思われます。

ただ、それ自体が問題になるとは思えません。では大谷さんの弁護士の「窃盗」という主張はどういう論理性があるのか考えてみました。水原氏の依頼により大谷さんが水原氏に貸付を行い、その支払いを確実にするために貸し手である大谷さんが自ら送金したとするのは動かない事実だと思います。窃盗は「だまし取る」という意味合いですが、2人の確立された関係をもって「だます」を主張できるとすれば水原氏が「すぐ返す」「もうギャンブルを止める」と言いながら大谷さんに度々泣きついたことが根拠なきストーリーに基づく大谷さんのお金の窃盗ということなのかと思います。

違法性ギャンブルの件は水原氏だけの問題であって大谷さんは第三者という立場で大丈夫だと思います。ただ、大谷さんはお金に甘すぎると思います。こんな事件が世間に広まれば大谷さんは何かあればお金を出してくれると目を付けられるのが関の山です。もちろん彼はまだ若いし、野球選手というプロの世界を深堀しているわけですからお金はお金の専門家を雇うべきでしょう。奥様が家計簿で管理できるレベルではないので通常はウェルスバンキングでの口座管理と金庫番の採用が当たり前だということです。金持ちと金庫番の関係はプロゴルファーとキャディのようなものなのです。

さて、水原氏はこれで全部失いました。ただ、失ったものが水原氏だけなら良いですが、お父様のレストラン経営にも深刻な影響が出るかもしれません。もちろん、大谷さんが立て替えて払ったものはすべて水原氏の生涯の借金になります。返せないでしょう。大谷さんは優しいので減免するというと思いますが、弁護士が徹底的にやる気がします。それはアメリカを舞台にした話なので少なくとも初めは日本的なお涙頂戴、〇〇に免じて許すという思想はない気がします。

ところで時を同じくして卓球で活躍した水谷隼氏が日経平均が最高値を更新した3月21日にXで含み損が「笑えない額になった もうおしまい」とつぶやいています。その損失額はマイナス551万円とのこと。ただ、彼の手持ち株式評価額が1億5千万円あるとのことでそれが本当なら損のうちには入らない額でしょう。このところ、株式市場も物色される銘柄もプライム市場からグロース株に広がり、一部銘柄が暴騰暴落を繰り返しており、火傷した個人投資家は結構いるのではないかと思います。

水原氏と水谷氏の共通点は負けを取り戻すためにさらに賭ける点です。これは負けが込む典型的なパタン。その心は「取り返さねば大変なことになる、だから止められない」であります。時々会社の金を窃盗して損失の穴埋めに使うという事件がありますが、人間追い込まれたら見境をなくすのは「性」だと思ってよいのでしょう。

株式投資では会社が倒産しない限り全損にはなりにくく、無限のリスクがあるとすればショートセラー(当該銘柄が下がると思い、売りから入る投資)かデリバティブ、多少性格は違いますが為替のストップロスでしょう。卓球の水谷氏が少し前のXで追証のお知らせが来たとありました。手持ち評価が1億5千万円で500万円ぐらいの損失なら追証にはならないと思いますが、一般投資家は手持ちが下がり、担保不足になれば即追証でこれはすぐに資金を入れないといけないのできつい仕打ちになります。

世の中には様々な依存症があります。酒、ギャンブル、麻薬は典型ですが、それ以外にもあらゆる分野であり得ると思います。私も酒や株式投資にはまりすぎたことはありますが、年齢と共に収まりました。若者に「我慢せよ」と言っても理解は出来ないかもしれませんが、人に迷惑をかけるという点は重々承知すべきでしょう。ましてや世界の大谷さんに嫌な思いをさせた点では日本の恥になりかねないレベルの問題だったと思います。強い精神力をもつ人材育成が必要なのでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月22日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。