一夜にして暗転するリスク

一夜にして暗転、これがぴったり当てはまるのが大谷翔平氏とプーチン大統領かもしれません。この二人を並列に並べるのはおかしいという意見があるかもしれませんが、このテーマを個人のバックグラウンドというより明日のことは分からない、というあらゆる人への警鐘という意味で考えてみたいと思います。

大谷さんの問題については様々な報道がありよくわかりません。先日このブログで「振込したのは大谷さんの確度が高いのではないか」と申し上げましたが、50万円、100万円ぐらいならともかく、6億円とか7億円という金額は尋常ではなく、大谷さんがそれをしなくてはいけない事情があるようにも思えなくもありません。

日本では悲鳴に近い声ですが、アメリカはそのあたりはドライでシビアです。無言はあらぬ噂を引き起こす、とアメリカの報道にあるそうですが、それは北米に住む者としてよくわかります。大谷さんはアメリカでもヒーローでありますが、よく思っていない人もいる、それは確かなのでそういう人たちの疑惑の念が上がってきては非常に不利になると思います。

大谷翔平選手 2024年1月9日 Wikipediaより

北米では「喋ってなんぼ」という社会で議論や疑念が生じた場合、あらゆることを曇りなくさらけ出す、これが基本です。もちろん、そのさらけ出し方は自分に有利なように持っていくわけで、トランプ氏の論陣はその典型です。その釈明なり説明なりを受けて人々はコトの判断をするわけです。

日本ではマスコミが判断材料を提供するのみならず、その白黒を記事のトーンで明白にして、読み手に判断そのものを暗示する、これがスタンスです。北米の場合、判断するのはそれを聞いた人々それぞれの考えがまだ強いと思います。

「沈黙は金なり」は今の世界では通用しません。自民党の裏金問題がすっきりしないまま展開しているのは真実が表ざたになっていないからです。政倫審でも答弁者が「自分は関与していない」という自己弁明に走り「では事実は?」と聞けば「わかりません」と答えます。この「わかりません」は日本語では「自分の関与は薄く、またその背景を仮に知っていたとしても他人様に多大なるご迷惑をおかけすることになり、不正確なことは口にはできない」という意味が内包されています。

思い出すのが今から13年前のオリンパス事件。同社は経営トップなどごく一部しか知らないバブル期の巨額損失を長年公表しませんでした。歴代の社長は極秘の引継ぎ事項として爆弾入りパンドラの箱が社長就任土産の抱き合わせパッケージだったと言ってもよいでしょう。

ところが、こういう噂は必ず漏れるのです。実は私も当時、同社に変な噂があるというのは耳にしていました。もちろん、具体的な内容は分かりませんが、怪しげな「爆弾」があるというのはある程度感性がある人で興味がある人ならなんとなく知っていたはずです。「パンドラの箱から染み出すすかな痕跡」と書けばイメージできるでしょうか?その箱はFACTAという雑誌とイギリス人社長がこじ開けたのが顛末です。

プーチン大統領も当たり前のように大統領選挙に勝ち、余裕で新たなスタートを切るところでした。そこに起きたのがモスクワ郊外のコンサート会場でのテロ事件でその犯行はイスラム国(IS)が犯行声明を出し、主犯4人で133人も銃撃死亡させました。これは驚くべき展開だろうと思います。

プーチン氏の専門である「諜報屋」としての面目は丸つぶれ、おまけに今後はウクライナと共にISにも目を光らせなくてはいけないという二面防御と攻撃を余儀なくさせられます。おまけにウクライナは同国がその戦場ですが、テロはロシア国内がその戦いの場であります。これは報道以上の衝撃がプーチン氏にあると思います。まさに大統領選の勝利の美酒が一夜にして暗転であります。

ほぼ全ての人に順風満帆な日々に突然訪れる暗転のリスクがあります。自動車を運転していて事故の加害者になる、病院でガンを宣告された、自分の家族内で警察沙汰の事件が起きた、自分の部下が不正を働いていた、会社が倒産した…いくらでもあります。

これを乗り越えるのはたやすくありません。私は自分なりにかなり厳しいハードルを何度か乗り越えてきました。それでかいくぐってきた今気に留めていることは想像できないリスクに対するメンタル的な対策です。それは諦めとやり直しのための発想転換でもあります。

問題が生じた時、人は腐りやすくなります。自暴自棄となり、なかなか再生できない人もいます。それを一晩寝て気持ちを切り替えることができるか、明らかになったその事実を自分の中で受け止めた上で再起する決意があるか、です。

もちろん、こんな軽薄な一言二言では「出来るわけないだろう」と仰ると思います。ただ、「災いは忘れたころにやって来る」は全ての日本人のハートに刻まれた言葉ですが、この災いとは災害だけではなく、自分の人生の根幹を崩すことも含まれるのだと私は考えています。

だからこそ、今日をしっかり生きてそれに感謝することだと思います。まるで宗教じみていますが、案外そんなところが落としどころなのではないでしょうか?言い換えれば今日までの人生に悔いはないのか、120%のチカラで走ってきて、突然そのレールが切れたとしても後悔なく、新たな開拓者となれるか、です。その強さがあれば一夜にして暗転するリスクも和らげられるのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月24日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。