日本のキャッシュレス化を進める唯一の方法

黒坂岳央です。

コロナ禍である程度進んだキャッシュレスだったが、ここへ来て推進の停滞と見られるニュースを目にすることが増えた。飲食店経営者が「手数料負担が大きい」と吐露したことで大きな話題を呼んでいる。

昨今、インバウンド需要も増えてどこへいっても外国人観光客で混雑している。「お支払いは現金のみ」だと店舗側は販売機会をロストしてしまうし、客側の利便性も良くない。コロナ禍でも思うように進まなかったキャッシュレス化はどうすればいいのか?

west/iStock

手数料を利用客負担にする

現在、我が国ではクレジットカードの手数料は加盟店が支払うのが原則となっており、利用者に請求してはいけないことになっている。これが店舗側に大きなコスト負担となり、キャッシュレス化が進まない現状を作り出している。

特に地方の飲食店は現金払いのみの店舗はまだまだ多く、旅行へ行くときは財布を持参するか、もしくは事前にキャッシュレス支払い対応となっている店舗であることを確認して来店する必要があるだろう。

加えて、訪日外国人がクレジットカード払いを選び、加盟店負担となることで手数料がかさむという問題も起きている。日本経済全体で見た場合、訪日外国人増がクレジットカード手数料増加になっているのだ。

この意見に対しては反発を受けそうだが、手数料を加盟店負担一択をやめ、利用客負担へ「選択可能」にするのはどうだろうか。

世の中には様々な価値観の人がおり「多少、手数料が高くてもいいからスピーディーに決済できるキャッシュレスが良い」「財布という荷物を減らしたいから割高でもスマホ決済にしてほしい」という人は少なくない。

筆者もその一人で、財布はできるだけ持ち歩きたくないし、ATMでお金を下ろす手間をなくしたいと感じる。滞在時間が限られている訪日外国人についても同じ感覚を持っている人は少なくないはずだ。

「自分が手数料を払っても利便性を取りたい」と考える人たちに手数料を負担してもらえば、加盟店側にはコストはかからない。絶対に手数料を払いたくない人は現金払い、という棲み分けができ両者にメリットが有る。

手数料は利用客負担という国も海外にあるので、これに倣うのだ。

日本は諸外国との相対比較で偽札の流通割合が極端に低く、日本全国にATM網が張り巡らされているので現金払いに不便を感じにくい。その一方でクレジットカード手数料が非常に高く、加盟店の本音としてはキャッシュレスに及び腰である。一部の飲食店では「キャッシュレスでは脱税し辛い」という闇の事情もあるかもしれない。

この状況を変えるには、クレジットカード手数料を利用者負担に「選択可能」にするしかないと感じるのである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。