日本企業衰退の原因は完璧主義と年功序列

日本経済新聞のインタビュー記事にリクルートHDの出木場久征社長が登場。日本企業の衰退の原因について極めて示唆に富んだコメントをしていました。

CHENG FENG CHIANG/iStock

急速に進んだネット社会の中で日本が取り残された理由は、完璧主義と年功序列にあるというのです。

日本社会がきちんとしすぎていることで、ネット社会と相性が悪いのが問題という意見です。

「日本は社会が高度に組織化され、きちんとしている。米国はこの近所の高速道路の料金支払いシステムが3カ月間も故障したままといった具合に、バグだらけの社会だ。ネットは何万行ものコードを書けば間違いがあるのが当然だし、サーバーも停止するのが当たり前。このような技術と日本は相性が悪すぎた」(インタビュー記事から抜粋)

ミスをすると大騒ぎして完璧を求める風潮は、スピードを犠牲にすることになり、環境の変化についていくことができなくなります。

不完全でも良いからまずは作ってみて、問題点を修正していくというアプローチ方法が評価されない。減点主義でコンプラおじさんが跋扈(ばっこ)する日本企業には勝ち目はありません。

また、年功序列にも問題があると指摘します。

「年長者に失礼を働いてはいけないという意識もイノベーションが起きなかった土壌としてある。以前、先輩たちからある技術を説明する資料を作るよう求められ、文句を言ったことがある。こういう説明は時間の無駄だからやめ、分からないならまず自分で勉強して意見を言うべきだ」(インタビュー記事から抜粋)

年長者にばかり配慮しすぎるのは企業だけに留まらず日本社会全体の問題です。例えば健康保険証を電子化しようとすると年配者が対応できないと反対する。このようなことを続けていると、ネット社会の変化に柔軟に対応することができません。

リクルート社がこの10年で爆発的な成長を遂げることができたのは、不完全であっても全力でやってみる企業風土と年功序列に囚われない人事制度を維持することができたからと考えることができます。

出木場久征社長はリクルートという会社のためではなく「こんなことが世の中でできたら楽しいな」という気持ちで仕事をしているそうです。転職したいという優秀な社員も引き留めず送り出し、また戻ってくれば一緒に楽しく働く。

大学のサークルのようなノリと事業に対する真剣なコミットメントの絶妙な融合こそ、リクルートの強味であるように感じました。

すべての企業がリクルートのようになるべきとは思いませんし、なれるとも思いません。

しかし、日本企業に足りない何かを教えてくれているように思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年4月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。