経営者をサポートする士業と呼ばれる専門家がいます。難関資格を保有する専門家として尊敬を集める一方、同じ資格保有者でも仕事内容や方針、そして能力も当然異なります。
「行政書士って具体的に何ができる人?と聞かれると、あれ……そういえば……みたいな人も多いんじゃないかと思います。とにかく取り扱える業務範囲が広い資格、これが行政書士の特徴です。」
そう語るのは士業向けの経営コンサルタントで自身も士業(特定行政書士)である横須賀輝尚氏。同氏の著書『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』から、プロ士業の見抜き方を再構成してお届けします。
あなたが行政書士にどんな手続が依頼できるか知らなくて良い理由
まず、あなたが事業を新しく始めるとき、新会社をつくるときなどは、行政書士を活用するのがベストです。
正確に言うと「始めると考えた時」が相談するタイミング。せっかく良いアイディアを思いついて、新事業を始めようとしても、許可要件を満たしていなければ、会社をつくったところで営業ができません。ですから、この検討を行政書士にしてもらいます。
そのときには、「こんな事業をやりたい」と明確に伝えましょう。それで、許認可事業に当たるかどうか、調べてもらうのです。あなたが調べる時間は事業投資に回しましょう。ですから、あなたが許認可について調べる必要はないのです。
行政書士は、行政書士以外の能力も使え
行政書士は良い意味での「変わり者」が多い。というのも、ほかの資格と比べて、行政書士の多様性といったらないんです。どういうことかというと、行政書士になる流れが、ほかの士業と違います。
弁護士の場合は、ほとんどが就職等をせずに法科大学院から弁護士事務所に就職という流れが一般的。税理士の場合も、税理士事務所に勤務した上で資格を取って独立が多い。社労士の場合は、一般企業で総務人事担当を経て、社労士事務所で経験を積んで独立。司法書士も勤務経験を経てから独立。こんな流れが多いのです。
これに対して、行政書士の場合は事務所経験を経て独立した人というのはあまり多くありません。そして、何より特徴的なのが、これまでの社会人経験と全く関係のないところから行政書士を取得し、開業するという人が多いのです。つまり、前職が行政書士事務所、あるいは関連する士業事務所ではない行政書士が多い、ということになります。
行政書士は受験資格もなく、受けやすい法律資格なので、それも一因でしょう(ちなみに、司法書士も受験資格がありません。誰でも受験できます。一方で、社労士や税理士は大卒資格を求められたり等、誰でも受験できるわけじゃないんですね)。
ということは、行政書士の前職は、必ずしも法律系ではない。営業職に就いていた人もいれば、プログラマーだった人もいるし、公務員だった人もいれば、社会人経験なしに行政書士で開業した人もいます(私です)。
ですから、行政書士の場合は、行政書士以外に何ができるかを聞くのもポイントです。ダブル領域を持っている行政書士は重宝します。専門性の高さとはまた別のプロ士業。横の拡張性がある行政書士は、つきあっておいて損はありません。
かなり古い話で恐縮ですが、私が行政書士で独立開業したのが2003年。当時はインターネット・マーケティングの黎明期でした。
まだまだネット営業に詳しい人がおらず、これはチャンスとビジネス・ブームになりかけていた「ブログ」に注目。当時はブログが世の中に出始めた頃だったんですね。私はブログでの営業に特化したコンサルタントを目指し、出版も実現し、一気に仕事を広げました。「どうせ頼むなら、ブログのプロでもある横須賀さんに」と当時は言われたものです。
ですから、行政書士には依頼する機会があれば、一度はこの拡張性を確認する質問「行政書士のほかに、なにか得意なことがありますか?」と聞いてみると、思ってもみない提案が来るかもしれません。
何でも知っているが、何にも知らないのが魅力?
プロ士業であれば「ハブ」機能を持っていて、どのようなジャンルの相談が来ても、自分の資格で対応できない業務については、自身の士業ネットワークから紹介等の対応をするものです。ですから、基本的にはどの士業にどんな相談を持っていっても問題ありません。ただ、その中で窓口としてベストな資格を挙げるとすれば、行政書士を最初の窓口にするのも、ひとつの活用方法です。
理由は、そもそもの業務範囲がかなり広範囲なため、色々な点にアンテナが立てやすい。言い換えれば、広く浅くいろんなことを知っている行政書士が多いため(中には無知な人もいるんですけど)、とりあえずの窓口として行政書士を選ぶのは良い選択だと言えるでしょう。詳細までは知らないけれど、広く浅く様々なことを知っていて重宝するという行政書士がいたら、それは貴重な存在です。
会社設立や許認可、登記はもちろんのこと、税務、労務、知的財産、マーケティング等、知っていれば最初にやれることって多いものです。ですから、拡張性も含めて、広く浅くものごとを知っている行政書士は、拡張型のプロ士業として、お付き合いをすることをお勧めします。
提案させたいのであれば報酬はケチらない
これは行政書士に限りませんが、コンサルティング業務やそのほか高度なことをお願いしたいのであれば、報酬は絶対にケチるべきではありません。高い報酬が、士業のポテンシャルを引き出します。特に、広く浅く対応できそうな行政書士であれば、高い報酬を提示して、何ができるかを提案させるのが最大の活用方法です。
例えば、コンサルティングを月額で契約する場合に、行政書士から5万円の契約料を提示されたら、10万円を逆提案してみましょう。10万円なら、どのような仕事ができますか?と。拡張性を考慮すると、ほかの士業よりも面白いものが出てくるかもしれません。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月22日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。