給与のカラクリ?基本給を抑える企業戦略とは

筆者が20代の頃に勤務していたコンサルティング会社の基本給は3万5000円でした。新卒初任給が20万円に達していた時期でしたのでかなり低く抑えられていたように思います。

基本給を低く設定すると、会社は総人件費を抑えられます。残業代と呼ばれる時間外労働手当や賞与、退職金も基本給を基準にした掛け算となるためです。

maroke/iStock

報酬に関する表現にはいろいろある

基本給とは、働くうえで基本となるベースとなるお金のことです。必ずもらえる額ですが、基本給を抑えられているというのは、どのような意味を持つのでしょうか。

そして、会社から支給される金銭には、「賃金」「給与」「給料」などさまざまな呼び名があることを覚えておきましょう。

「賃金」とは、労働に対して従業員が受け取るすべてのお金のことです。賃金には、給料、各種手当、賞与、通勤交通費といったものが含まれます。給与より、賃金のほうが幅広い意味を持っています。「給与」とは、雇用主から労働者から使用人に与えられる「給料」や諸手当の総称を意味します。

「給料」は言い換えるなら「基本給」のことです。基本給とは、働くうえで基本となるベースとなるお金のことです。残業手当や役職手当などの各種手当、通勤交通費、インセンティブなどを一切含まない、必ずもらえる額だと考えればわかりやすいでしょう。

「給与」には現物支給もあります。現物支給とは、金銭以外で経済的利益のあるものを指しますが、「給料」に現物支給は含みません。「給与」は給与所得など企業側の法表記に使用されます。「賃金」は労働基準法など労働者側の法表記に使用されます。

「固定給」とは、一定時間の勤務に対して一定額の賃金が支払われる給与体系のことです。「固定給制」と表記されます。「時給制」「日給制」「週給制」「月給制」などの体系が存在しますが額が固定されていることに特徴があります。

なお、「報酬」の場合は意味合いが異なります。労働に対する対価として支払われる場合もあれば、テレビ出演、取材協力、講師や研修などを委託した際にも使用します。

なぜこのようなことが起きるのか

戦後、日本では多くの会社が年功序列制度を採用していました。勤続年数に応じて基本給がアップする仕組みで退職金も「退職時の基本給 × 勤続年数 × 退職事由係数」という計算式をベースに算出する制度が大半でした。重厚長大型の歴史のある会社は基本給連動型の退職金制度となっているケースが多かったといえるでしょう。

基本給は働くうえでベースとなるお金です。多くは会社ごとの裁量で決定されていると思います。基本給は法律で守られているため、一度設定すると簡単には下げられません。一方で各種手当は法律で守られているわけではありませんので、会社の裁量でカットが可能です。

会社が「総人件費を抑えたい」「給与をカットしたい」と考えた場合、カットできるのは手当です。基本給が低い場合、何らかの理由によって手当がカットされた場合、手取りが大幅に減ることになりますからリスクと考えられるでしょう。しかし、基本給の低さに明確な規定があるわけではありません。

労働者にとって基本給が低いことによるメリットは存在しません。とはいえ、簡単に基本給がアップするような時代でもありません。皆さまの基本給はどんな感じですか?

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)