トランプ氏が麻生副総理をニューヨークのトランプタワーでわざわざ出迎えて歓待し、様々な意見交換をしたと報じられています。岸田首相はバイデン大統領とがっちり関係を強化していますが、「もしトラ」対策として麻生副総理はトランプ元大統領を担当するという二枚舌仕掛けです。すでに英国やポーランドなどがトランプ氏と非公式に接触しており、今後、大統領選の行方次第では「トランプ詣で」の諸外国の政治家が増えるのでしょう。今回の麻生氏訪米はトランプ氏の「アベに会いたい」というつぶやきから実現したという話もありますが、麻生氏とトランプ氏、ともに見た目が怖いおっさんじゃなぁ、と思います。
そのトランプ氏が会談したその日に足元で進む円安について「大惨事だ」と自身のSNS、トゥルースソーシャルに投稿しました。大惨事、つまり、円安=ドル高⇒アメリカの輸出競争力低下⇒国内空洞化を懸念するのでしょう。この懸念は私は正しいと思っています。
これについて森永卓郎氏は「円安が安定すると、日本で作ったほうが安いじゃん!っていう話になってどんどん工場が立って、日本での雇用は増えていく」と述べ、基本的に円安に否定的ではないスタンスです。あくまでも日本側に立つ代弁で高橋洋一氏も確か為替は為替という意見だったと理解しています。
一方、日本の経済界からは行き過ぎとの声があり、JALの社長に就任した鳥取三津子氏も現状をかなり懸念しているとし、130円水準が望ましいと述べています。
つまり様々な意見が飛び交っているのですが、大事なのは為替は円とドルだけじゃないという点です。今回もドル一強であって、他国の通貨も対米ドルで安くなっている点に留意すべきです。また、森永氏がトランプ氏の主張は古いビジネスモデルと述べていますが、私からすれば森永氏の主張も古いと思います。つまり、日本に工場を作って雇用が増えるというビジネスモデルが少子化で労働力不足の中、現実的かという疑問があるのです。
日本の労働力不足は顕著で万博危機も建設従事者が足りないことが主因の一つです。もしもすべてのパビリオン建設が開会までに間に合わなければ日本の国際イベント史上初のお恥ずかしい事態になります。しかし、それが日本の現状だということなのです。
一方、財務省は今回の円安局面で今のところ口先介入のみで動いていないのは実弾介入が効果薄だということがわかっているからかもしれません。アメリカの金利の先行きが落ち着くのを待つか、日銀が強気の金融政策を打ち出すのを待つかといった対策しか取れないと思います。とりあえず日銀の政策決定会合をしている26日までは待つのではないでしょうか?実弾介入があるとすればゴールデンウィークのマーケットが薄い時だと思います。
個人的にはトランプ氏に同意で、ドル独歩高はアメリカに不利だと思います。なぜそのような事態を招いたか、私はFRBの判断ミスのような気がしてならないのです。以前にも指摘したように金利を上げて経済を冷やすはずがむしろヒートアップさせているのです。金利高⇒ローンなどが払えない⇒賃貸住宅需要増⇒大家は借入金利が高いので住居費を引き上げ⇒労働者は生活苦を訴え⇒雇用者は賃金引上げ⇒ローンがない層には可処分所得増⇒物価高でも対応可能 といったシナリオです。つまり物価の悪循環が生じているのです。私からすると価値がそんなにないモノに高額の支払いをすることに抵抗を持たなくなり、顧客は喜んで理不尽な価格でも「これが今の価格」と思い込まされていることに気がついていないと思うのです。
もちろん、労働の質も下がっています。働くのはアジア人とヒスパニック、それに一定年齢以上の良き時代を知るアメリカ人では話にならないのです。
トランプ氏の言い分にコメントするならまるで円だけがドルに対して安いというイメージを持っていることでしょう。事実、氏はSNSで「This is what made Japan and China into behemoths years ago.(これが日本と中国を巨大企業に押し上げた原因だ)」と述べています。円安⇒日本からの爆発的輸出攻勢⇒アメリカ産業の敗退という60年代から70年代の話を揶揄したのではないかと思います。USスチール買収反対もそのあたりにあるのかもしれません。
では日本円は本質的にもっと円高に修正されるのか、というと最近考えを少し修正しつつあります。1ドル=100円という時代には戻ることはないと思います。理由は人口減で経済の総合力が低下するからで一人当たりのGDPなどの指標が重視されてくるわけです。最新版で日本は世界34位。とすれば主要通貨の中で円が強くなる理由もないのかなと思うわけです。それこそ政策金利が1-2%でも耐えうる頑強な経済力を日本が持つなら円も120-130円台に戻ることもあるでしょうが、今の日本では案外長期的に180-200円も視野に入りやしないかとびくびくしているのであります。
トランプ氏が喝を入れて円高になってくれるのであればそれは少なくとも私には嬉しいの一言であります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月25日の記事より転載させていただきました。