「GWは自宅派」が急増した理由

黒坂岳央です。

「ゴールデンウィークは誰しも旅行に出かけ、経済も人々も盛り上がるタイミング」、このイメージはすでに過去のものとなったかもしれない。

明治安田生命の2024年3月の調査によると、インフレの物価高の影響でGWの過ごし方に変化があると報じた。GWに使う予算は1万円減少、自宅で過ごす派は46.8%と昨年に比べて5.2ポイント上昇している。ちなみにYahooの「みんなの意見」では5,700人件を超える投票の内、「自宅周辺で過ごす」という回答が最多で70.5%であった。

また、昨今のインバウンド混雑でGW中は日本人以外の混雑要因もあり、かつてないレベルで「GW自宅派」が増加しているようだ。

Seiya Tabuchi/iStock

GW予算減はインフレの影響

GWはハイシーズンであり、需要に連動して売価が上がる「ダイナミックプライシング」を価格戦略に採用する宿泊施設や観光地は多く、これ自体は昔からずっと変わらない。これまではそんな事情があっても、家族連れでの旅行や観光消費は続いてきた。

状況が変わったのはインフレによる物価高だ。「家計への影響がある」と度合いの差はあれど、そう回答した人の割合は調査開始後、過去最多の合計94.1%を記録している。

少々、冷たい意見に感じるかもしれないが、この変化による観光産業への消費は大きな問題にはならない可能性はある。理由としてその落ち込みを補って余りある旺盛なインバウンド需要があるためだ。昨今、何かとインバウンド需要に対して否定的な意見は少なくないが、仮に日本人が消費せず、海外からの消費もないとなれば観光産業は悲惨なことになる。そう考えるとあくまで経済的メリット面だけで考えるなら、「インバウンド需要は日本経済の救い手」といえるかもしれない。

GWを見直す時では?

日本を取り巻く環境は大きく変化している。働き方改革やワークライフバランスの浸透により、かつてと比べれば労働時間、残業時間、有給取得率は大幅に改善されている(もちろんすべてではないが)。また、従来からGWを好ましく考えない人たちもいた。GWは仕事が止まってしまう会社経営者やフリーランス、時給労働者、そして旺盛すぎる需要に追われるサービス業界の人材だ。

GWが誕生したのは1948年で今から遥か昔、「全国民一斉に長期休暇」というスタイルは現代人のライフスタイルとマッチしないと思っている。かつて、製造業が我が国のGDPの半分を占める主要産業で、工場に大量の人材が働く昭和には家族団らんを楽しむ機会としてうまくワークしたかもしれない。だが、今は違う。

依然として我が国における製造業の割合は20%を超える主要な産業である事実は否定できないものの、昭和55年以降減少傾向であり、代わりにサービス業の割合も増加している。またその他のマクロ環境も大きく変化している。

同時に価値観の多様化でワークスタイルも様々だ。自宅派が増えた今、本来の意味合いも、消費へプラスに寄与する度合いも薄れているだろう。GWという休み方を改め、その分の休みを有給取得に変えて混雑を分散する方が最大公約数的なトータルメリットが大きいのではないだろうか。

実現可能性のプロセスの立案は別の議論が必要だが、個人的にはGWは昔ほど歓迎する人はおらず、見直すときが来ているのではないかと思っている。

今年は特にGWは自宅派が増えたようだが、自分自身は昔からずっと自宅派だった。厳密にいえば、図書館や自習室で勉強をしたり、自宅で仕事をしてきた。今年も例年通り、基本は自宅で過ごし、お出かけは子供を近所の公園で遊ばせるくらいを想定している。観光地が多少の割高なのは許容できても、許容できないレベルの混雑である。そう考えるとGWは消費ではなく、自己投資がもっとも合理的なプランに思えてしまうのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。