日本共産党は『日本型高度社会主義国家』のビジョンを示せ

加藤 成一

日本共産党の理論的立場

日本共産党は創立以来100年の歴史を有する政党であるが、その理論的立場はマルクス・レーニン主義(科学的社会主義)に忠実であり、その核心である「敵の出方論」「プロレタリアート独裁論」「民主集中制」を堅持している。マルクス・レーニン主義(科学的社会主義)は党規約2条で理論的基礎と規定されている。

「敵の出方論」は、共産党の理論的指導者不破哲三元議長の著書「人民的議会主義」には、「我が党は革命への移行が最終的には敵の出方にかかるという立場をとっている」(244頁)とあり、「プロレタリアート独裁論」は、党綱領五の17で「社会主義をめざす権力」として規定され、前掲書にも「我が党は社会主義日本では労働者階級の権力すなわちプロレタリアート独裁が樹立されなければならない」(241頁)とある。「民主集中制」は党規約3条に規定されている。

田村智子委員長 共産党HPより

日本共産党の基本政策

日本共産党の基本政策は、党綱領で規定される、(1)社会主義・共産主義社会の実現であり、(2)そのための民主統一戦線政府である民主連合政府の樹立であり、(3)生産手段の社会化による利潤第一主義の廃止と生産力の発展であり、(4)外交安保政策としての日米安保条約廃棄と自衛隊解消であり、(5)多角的平和外交による平和国家の確立である。

しかし、日本共産党の上記基本政策には、先進国である日本の発達した高度な先端科学技術水準に立脚した強力な「経済成長戦略」に基づく「日本型高度社会主義国家」の青写真・ビジョンが欠如している。

強力な「経済成長戦略」がない日本共産党

すなわち、日本共産党には先進国である日本の経済・社会を飛躍的に成長発展させる強力なエンジンとしての「経済成長戦略」がない。

最近の共産党の30年間の経済停滞を打開する「経済再生プラン」でも、(1)大幅賃上げ(2)消費税減税(3)大企業内部留保課税が中心であり、強力な「経済成長戦略」がなく日本経済の飛躍的な生産性向上への視点も意欲も見られない。

具体的には、日本共産党は世界最先端の台湾半導体製造大企業TSMCの熊本県への工場誘致及び政府支援に「環境破壊」等を理由に反対であり、国内次世代最先端半導体製造合同企業ラピダスへの政府支援にも「米国言いなり」「戦争国家づくり」等を理由に反対している(赤旗2024年4月3日)。

さらには、日本経済発展の起爆剤となり得る超高速リニア中央新幹線建設にも「環境破壊」「騒音公害」等を理由に反対し、世界各国が日本に集結する大阪・関西万博にも「経費倍増」「カジノ」等を理由に反対であり開催中止を求めている。

しかし、半導体は日本の国際競争力強化の見地からも日本経済の命運を左右する最重要産業分野である。日本は熊本県に誘致した台湾の世界最先端の半導体製造大企業から最先端半導体製造等のノウハウを存分に吸収活用できるのであり、その利益は計り知れない。

日本共産党は「日本型高度社会主義国家」のビジョンを示せ

日本共産党はマルクス、エンゲルス、レーニンの教義にとらわれてはならない。マルクス、エンゲルスは主として19世紀イギリス資本主義を対象としてマルクス主義理論体系を構築し、レーニンは主として20世紀帝政ロシアを対象としてレーニン主義理論体系を構築したものであり、当然ながらそれぞれに時代的制約がある。

したがって、日本共産党は時代的制約があるマルクス・レーニン主義(科学的社会主義)の教義にとらわれてはならず、21世紀の先進国日本及び世界各国の情勢と実情に即応し、旧ソ連や中国とは異なり、日本国民の思想・信条・集会・結社・言論・出版・表現の自由等の基本的人権を最大限尊重し、且つ強力な経済成長戦略を重視した「新しい社会主義理論体系」を構築すべきである。

筆者は北朝鮮や中国を歴訪したが、いずれの国も必ずしもマルクス・レーニン主義の教義にとらわれずに創造的に適用し、朝鮮労働党は金日成主席の、思想における主体・政治における自主・経済における自立の「主体思想」に立脚して独自に国家を運営し、中国共産党は特色ある「社会主義市場経済」に立脚して独自に国家を運営している。マルクス・レーニン主義の教義にとらわれず、創造的に適用した特色ある「社会主義市場経済」に立脚した中国の経済発展は目覚ましい。

そうだとすれば、日本共産党もマルクス・レーニン主義の教義にとらわれず、先進国として、前記の日本国民の基本的人権を最大限尊重するとともに、最先端の人工知能、情報、通信、半導体、バイオ、ロボット、宇宙開発等の日本の発達した高度な先端科学技術水準に立脚した強力な「経済成長戦略」を含め、日本の経済・社会を飛躍的に成長発展させる前記「新しい社会主義理論体系」に基づく21世紀の「日本型高度社会主義国家」の青写真・ビジョンを国民に示すべきである。