仕事で「誰も助けてくれない」と感じる人が見落としている視点(滝川 徹)

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自分ががんばらないと組織が回らなくなる。そんな責任感から仕事を積極的に拾いにいきながら同僚に対し「助けてくれない」「主体的に行動しない」と不満を感じている。そんな人も少なくないのではないだろうか。

しかし実は、同僚が動かないのは私達が仕事を積極的に拾いにいっているからだ。そう語るのは現役会社員・時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング) 』より、仕事を自ら積極的に拾いにいくデメリットの解説を、再構成してお届けします。

「自分ががんばらないと組織が回らなくなる」という思い

時として会社では、誰がその仕事を処理すべきか明確に決まっていない仕事が発生することがある。昔の私はそうした仕事を積極的に拾うようにしていた。拾った仕事を自分で終わらせることもあったし、ほかの人にパスすることもあった。

いずれにせよ、その仕事が宙ぶらり(誰もその仕事に着手しない状態)にならないよう細心の注意を払っていた。これは、その仕事をやりたかったからじゃない。そうしないと誰もやらないと考えていたからだ。平たく言えば、行き場のない仕事を自分が拾いにいかなければ組織が回らなくなる。本気でそう思っていたのだ。

こうしてやる必要のない仕事を自ら拾いにいくのは、24時間365日働く人生への特急券だ。特に会社での役職や立場が上になればなるほど「自分がそうしてがんばらないと会社(組織)が回らなくなる」と思いがちだ。

しかし会社は私たち抜きでも問題なく回っていく。世界に名だたる企業のトップ経営者が代わったとしても、その企業は変わらず存続していくように。

組織を回らなくしていたのは私自身だった

私はそう考え、あるとき勇気をふり絞って仕事を拾いにいくのをやめてみたことがある。「組織が回らなくなったらどうしよう」と激しい不安に襲われたが、様子を見守ることにした。その結果、どうなったか。

結論から言えば、何も問題は起きなかった。それどころか「自ら仕事を拾いにいかない」と私が決めつけていた同僚たちが、次々と「この仕事、私やります!」と手を挙げだした。なんてことだ。同僚たちは自分で仕事を拾わないわけじゃない。私のせいで拾いにいけなかったのだ!

恥ずかしいことだが、組織を回らなくしていたのは私自身だったと痛感した出来事だった。私を動かしていたのは「組織が回らなくなる」という不安だった。不安からくる考えにふり回されてはいけないのだ。

余裕がないなか、自らあらたな仕事を拾いにいくのはやめよう。「組織が回らなくなる」なんて考える必要はないし、君がなんとかしなくても会社は何事もなく回っていく。会社とはそういうものだ。

滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。 

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年5月10日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。