10日の衆議院外務委員会にて、上川外相が広島、長崎への原爆投下を引き合いに出したサウスカロライナ州選出のリンゼー・グラム議員の発言を批判しました。
グラム氏はハマスとの戦争で危機的状況にあるとされるイスラエルに対して、全面的な支援の必要性を主張する文脈の中で原爆投下を肯定する発言をしました。弾薬支援、武器支援停止を検討しているバイデン政権を批判する思惑があったことが推測されます。
このグラム氏の発言が飛び出した上院歳出委員会の場で、オースティン国防長官は原爆が「戦争を終わらせた」と証言しました。
オースティン氏はグラム氏から自身が政策決定する立場なら日本に対して原爆を使用したかどうかと質問されました。しかし、オースティン氏は直接的な回答は避け、原爆が「戦争を終わらせた」という言い回しで切り抜けています。
上川外相はグラム議員に申し入れを行ったそうですが、核兵器の非人道性に言及するのみで、原爆が日本降伏につながったというグラム氏の歴史認識には注文は付けませんでした。
広島に原爆が投下される前から日本の降伏は秒読みの段階に入っており、当時の鈴木内閣は中立条約を締結していたソ連の仲裁による連合国との終戦を構想していました。
しかし、長崎に二つ目の原爆投下があった8月9日にソ連が対日戦線布告を発表したことで、矢が尽きた大日本帝国は昭和天皇による「聖断」によってポツダム宣言受諾を決めました。
犠牲者の数で日本が終戦が決まるのであれば、東京大空襲の時点で日本は降伏したはずです。
しかし、終戦日前日に徹底抗戦を望む陸軍強硬派がクーデターを決行し、皇居を占拠しようとしました。この歴史を知っていれば、原爆が戦争を終わらせたで簡単に済ますことはできないはずです。
民間人、政治家問わず、米国民の原爆投下をめぐる歴史認識はあまりにも一国主義的で、日本がどのような過程を経て降伏したのかが理解されていません。
上川外相は米国の歴史認識自体を批判するべきでは無かったのでしょうか?