並行在来線問題解決のために国は新たな枠組みを作るべき

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北海道新幹線の札幌までの開業が延期されることが発表された。

北海道新幹線、札幌延伸の開業延期へ 建設主体「遅れは数年単位に」

北海道新幹線、札幌延伸の開業延期へ 建設主体「遅れは数年単位に」:朝日新聞デジタル
 北海道新幹線の札幌市までの延伸について、建設主体で国土交通省所管の独立行政法人「鉄道・運輸機構」は8日、目標とする2030年度末の開業が「極めて困難」だと国交省に伝えた。工事が3~4年遅れており、工…

しかし、開業までに解決すべき問題は数多く残されている。筆者は解決までの時間稼ぎができて、延期は良かったとさえ思っている。

開業に向けて大きな問題になっているのが並行在来線区間である。新函館北斗と長万部の間で、線路を残すかどうか決定していない。沿線住民が少なく旅客営業としては存続できないが、北海道と本州を結ぶ貨物列車が多く走っているために、存続させて欲しいという声は大きい。

こういう問題が起こるのも、今の並行在来線に関する枠組みが旅客営業を中心とした考え方で作られているからだ。新幹線ができれば、長中距離旅客は新幹線に移行するので、残った地域輸送部分は地元自治体で対処して下さい、ということだ。

しかし貨物列車に地域輸送は存在しない。並行在来線が第3セクターになっても、そこを走る貨物列車はほぼ長距離輸送のものだけである。例えば青森県は北海道と関東を結ぶ貨物列車のために地域輸送用と比べて過剰な設備を維持させているし、福井県も東北・北海道と西日本を結ぶ貨物列車が多く走り、同じような状況だ。

九州新幹線の並行在来線会社(肥薩おれんじ鉄道)は、旅客列車は全てディーゼルカーなのに貨物列車のために電化設備を維持させている。ちなみに貨物列車が走っていなかった西九州新幹線の並行在来線区間では、電化設備が撤去されている。

そして今の枠組みでは、並行在来線会社の経営を助けるために「貨物調整金制度」という補助金が使われる制度を通して使用料が支払われている。実際に収入の過半を貨物調整金が占めている第3セクター会社も多い。

貨物列車の存続握る並行在来線が抱える財源問題

北海道の貨物列車が存続危機に瀕する根本問題
JR各社は赤字ローカル線存廃論を進める。一方、新幹線延伸でJRから分離する並行在来線の存廃も熱を帯びる。鉄道貨物の大動脈、北海道の函館ー長万部間を廃線すれば、貨物列車は道内から消滅。影響は全国に及ぶ。

そもそも地域鉄道で必要とされていない過剰な設備の維持を地元自治体に求めて、貨物輸送に対する助成金で地域鉄道を維持するという枠組み自体が本末転倒なのではないかと筆者は考える。

貨物鉄道ネットワークは全国スケールで考えることであって、その一部区間の運営を地元自治体に委ねるというのは、枠組みとしておかしい。トラック輸送に関する2024年問題もふまえ、広域輸送を担う貨物鉄道路線は国が維持し、地域輸送は地元自治体が運営する第3セクター企業が線路会社(国)に使用料を支払うという形にする方が筋が通っていると私は考える。いわば「国道」のようなものだ。

青森県の第3セクター企業は、現在でも旅客列車運営に特化し、線路使用料を線路保有者である県に支払う上下分離方式を採用している。

青い森鉄道が示すローカル線「上下分離」の光と影

青い森鉄道が示すローカル線「上下分離」の光と影
青森県の第三セクター・青い森鉄道(目時―青森間121.9km)は全国で最も長い並行在来線だ。2022年12月、開業20周年を迎えた。利用の少ない地方鉄道の将来像が揺れる中、地元自治体が線路を所有する「上下分離方式…

国の物流という観点から見て本来正しい方向は、線路を地元の県が保有するのではなく国が保有し、旅客鉄道会社とJR貨物は国に対し線路使用料を支払う、というものではないだろうか。

貨物調整金の制度については、現行の枠組みが2030年度までで、2031年度以降については現在検討中である。物流2024年問題と合わせて道路財源から一部鉄道維持費用を転用するなど、全く別の考え方を検討する世論を醸成するべきだと筆者は考える。