今回は少し前の話。昨年の暮れに静岡県熱海市を訪ねました。
年末だったということもあると思いますが、この日の熱海はサムネイルにあるような大賑わい。熱海プリンは通りの向かい側の専用の待合所も人であふれるほどの人だかりでした。
ここ数年の間に熱海は何度か訪ねているのですが、来るたびに観光客が増えているように感じます。インバウンドの影響もありますが日本人もかなり多い印象です。実際熱海に来る外国人客は全体の10%にも満たず、ほとんどは国内旅行客であるといいます。それに若い方が多い。熱海を訪ねる観光客のうち30代以下の占める割合は全体の40%だそうです。
昭和初期、東海道本線が熱海経由となることでアクセスしやすくなり人気観光地にのし上がった熱海でしたが、戦後の団体旅行ブームが去ると人気が衰退していきます。全盛期には年500万人を超えた宿泊客は2013年ごろには250万人程度と半減しています。それが近年は復調にありコロナ前の2019年には312万人まで復調しました。海岸沿いは新たなホテルの建設も進みます。
東京周辺の山梨や栃木などの温泉地が衰退からの復活に苦労する中、熱海が復活できたのは新幹線を使えば東京から1時間もかからない立地や、海辺の景観の美しさといった景観の有利性ももちろんありますが、若い観光客の目をひくようなショップや観光施設を充実させるなどの仕掛けづくりに力を入れてきたことにあります。
海水浴やSUP、カヌーなど若い人たちが魅力を感じるようなマリンスポーツも充実させています。このほか、駅前に日帰り温泉施設を作るなど日帰り客の取り込みも積極的に行ってきました。団体旅行から個人旅行に移り変わっていった旅行需要に対応し、特に若い人たちに焦点を当てて若い人向けのスポット、レジャーを増やしてそれをインスタなどで紹介してもらいさらに若い観光客を呼び込む。熱海ではその取り組みが奏功しいい循環になっています。
そんな熱海の海岸を歩きます。温暖な土地であることも熱海の優位性の一つでしょう。冬というのに暖かく、散歩も楽しくなります。
かつては尾崎紅葉の「金色夜叉」の舞台として名をはせた熱海ですが、熱海を訪ねる観光客の客層は大きく変化してこの物語を知る人はだいぶ少なくなりました。しかしそれも時代の流れでしょう。
熱海は地の利を生かしたうえで知恵を働かせて若い息吹を町に流し込むことに成功して復活に成功しました。コロナ禍とその後のインバウンドの到来で旅行業界は深刻な人手不足でせっかくの観光需要を取り逃さないようにすることが今の課題といいます。一度どん底を味わったからこそ得られる反省点を活かしてさらなる隆盛をつかみ取ってもらいたいものです。
実は今月末、衰退に喘ぐある温泉地を初訪問します。熱海に比べて何が足りていないのか、何ができそうなのか。素人目線ではありますが、そんな視点で温泉地を歩いてその考察をブログで書けたらと思っています。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。