対面よりも機械対応の方が顧客満足度は高くなる

日本国内の人手不足はこれから益々深刻化しそうですが、これは日本だけの話に限らないようです。ハワイに住んでいる日本人の方も、人材不足で優秀な人を採用するためにはかなりの賃金を支払わないとならなくなったと嘆いていました。

その対策として、最近はコンビニもセルフレジを導入したり、ファミレスでもテーブルに置いてあるタブレットで客が自分で注文するシステムにして人手不足を解消するようにしています。

Suriyapong Koktong/iStock

お店のスタッフが対応していたのが、機械対応になるとサービスが低下したように感じるかもしれません。

確かに、高級なレストランでロボットが配膳したりタブレット注文になったら、来店者はかなりガッカリすると思います。

しかし、コンビニのセルフレジやファミレスのタブレット注文は、対面で接客されるよりむしろサービスのクオリティは高いと私は思います。

コンビニではレストランのソムリエのようにお客はスタッフと会話をしたい訳ではありません。できれば、無言で短時間のうちに買い物を済ませたいと思っているはずです。

対面のレジで買い物をすると「ポイントカードはお持ちですか?」「袋はご用意しますか?」「お支払い方法は?」と聞かれたことにリアクションしなければなりません。セルフレジなら、タッチパネルで無言でサクッと会計ができてむしろこちらの方が快適です。

ファミレスでも同じように、アルバイトのスタッフとの会話は不要です。スタッフが注文を取りにくると、あれこれ悩む時間を取れなくなりますし、注文が終わると「ご注文を確認します」「以上でよろしかったでしょうか?」と注文確認しなければなりません。

タブレット注文なら、好きな時間だけ悩んで、注文を決められます。途中で注文を変更したり取り消しするのも相手がタブレットなら遠慮する必要はありません。また注文のやり取りを間違えることも少ないですし、間違えたら自分の注文ミスなので自業自得と納得できます。

という訳で、今後コンビニやファミレスのようなお店では機械化が更に進み、その方がお客からも高いサービスだと思われるようになるはずです。

一方で高級レストランやラグジュアリー商品を取り扱うようなお店は、対面の接客能力によって顧客満足度が大きく変わってくることになります。

そんな2極化が進むようになるはずです。

不思議なのは、私が好きなセブンイレブンや吉野家がなぜ機械化を推進しないかです。

セブンイレブンは他のコンビニに比べセルフレジの導入が遅れていますし、吉野家は未だに自動販売機での食券ではなくスタッフに注文して会計スタッフが対応します。

意図的なものだとしたら、顧客ニーズの変化を把握していないのではないかと心配になります。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年6月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。