サラリーマンという不動産投資の「特権階級」

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大手企業を退職して起業しようとしている若者や、定年を控えて退職の準備をしているシニアに強くアドバイスしているのは、辞める前に「お金を借りること」です。

不動産投資のための金融機関による借入の審査は「属性」によって行われます。転職の面接のような本人のやる気や能力ではなく、その人の「肩書」によって判断されます。

会社ではまったくうだつの上がらないダメダメ社員であっても、勤務先が上場企業で正社員なら金融機関は喜んで貸してくれます。逆に、いくら優秀な人材であっても出来立てのベンチャー企業の社員にはお金は貸しません。

つまり、信用のある会社の正社員であるというだけでお金を借りる力が得られる「特権階級」だということです。そして、その特権は辞めた瞬間に消えてしまうものなのです。

とすれば、辞める前に借りられるだけ借りておくのが良いというのが私の考えです。

借りたお金はいつでも繰り上げ返済することができます。しかし、追加でお金を借りられるかどうかは金融機関次第です。であればたくさん借りておいた方が、オプションを自分が手に入れられることになるからです。

給与からしっかり源泉徴収されて、拘束時間の長いサラリーマンの数少ない特権が、所属する会社の看板を利用した借入です。1%台半ばで、ほぼフルローンの借入ができるサラリーマンは世界の中で日本だけではないでしょうか?

「借入を使った不動産投資にはリスクがある」とやらない言い訳ばかりしているサラリーマンがいます。しかし、そもそも自営業に比べ仕事でリスクを取っていないのですから、投資でリスクが取れる余地は大いにあります。

リスクを恐れて資産運用に二の足を踏んでいるうちに「リスクを取らないリスク」になってしまっている。インフレと円安の中で、そんな状況になっていることに気が付かず、お金の不安が解消できていない人が多すぎるのはとても残念なことです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年6月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。