アニメの著作権侵害は阻止できるのか?

アニメの著作権侵害被害額が2兆円にも達するとされています。この中にはいわゆる海賊版=無断で複製した出版物もあればアニメキャラクターを参考に自分で書くパクリ型もあります。最近では生成AIが似たものを作るということも可能になっており、作る側と取り締まる側で鼬ごっこにあるといえます。

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私どもが夏に出店するアニメの祭典は毎年、数多くのベンダーがずらり並びますが、日系の会社は私どもぐらい。書籍はさすが正規ルートで仕入れている私ども以外に商売敵のベンダーさんはないのですが、キャラクターグッズや雑貨になると正規ものを売る私どもと怪しいものを売る他のベンダーとのガチンコ勝負になります。ここは中国ではなく、カナダなのですが、それら怪しいものでも飛ぶように売れるのはなぜなのでしょうか?

基本的にキャラクターグッズはオリジナルのアニメ制作会社に著作権料を払うのですが、パクリはその権利料を払っていないことに起因しています。ところがそんなことは顧客である善意の第三者にはわからないのです。つまり我々が「これは日本から仕入れた正規品」といっても「でも、あっちの店のグッズの方がかわいいから」と言われればおしまい。つまり著作権料を払ったかどうかではなく、出来栄えが良いかどうかそれ次第で売れ行きは決まるわけです。

もちろん、日本のキャラクターグッズはビジネスとして確立したレベルにあるのでクオリティを含め、個人に毛が生えたようなレベルのパクリ商品とは勝負にはならないのですが、価格では負けるのです。

話は変わりますが、10年ぐらい前に正しい日本食を伝える動きが始まりました。きっかけは2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたからです。その後、農林水産省などが「和食文化を未来に伝えよう」というキャッチで親善大使や海外での調理技能認定制度を展開しているようです。私はそれは知っていましたが、海外にいてそれに接したことは一度もありません。

日本人は和食を大事にしたいといいながらも魚は切り身しか知らないという方が主流になり、正月料理は一切作れないのが当たり前の時代に和食をどう伝えるのでしょうか?むしろ、様々なフュージョン料理が増えてきて和のテイストがそこに含まれているフレンチやイタリアンを見るにつけ、和食の基礎力が応用されたという見方もできるのです。

例えば街中にあふれる韓国人が経営する日本食レストランで味噌汁がお椀で出てくるのは良いのですが、そこにレンゲが入っています。私はレンゲを使って飲むのか、日本的にお椀に口をつけて飲むのか悩むのです。理由はお椀に口をつける文化は世界ではあまりなく、品がないとみられるからです。

閑話休題。アニメについては動画や漫画のストーリーは今のところパクられていません。その点からキャラクターグッズなどの著作権料の支払いが現時点での主眼になります。しかし、似ているだけだとどこまで戦えるか、そして制作会社側にも戦うエネルギーと時間とお金があるか、それがモグラたたきになったらどう対処するか、このあたりが肝なのだろうと思います。例えば私どもでイチオシのアニメ画集はさすがパクりモノは少なくクオリティも高いものが揃っています。中国のゲームアニメ「原神」も著作権を取った日本版を我々は輸入販売していますが、一冊8000円近くするのに中国人がパンパン買っていきます。クオリティが良いですし、そのような企画商品は日本は他国には負けないのです。

もしも正規品を押し出したいならキャラクターグッズにもどこか隅の方に正規品の印をつけるべきでしょう。我々は「ほら、これがついているでしょ、正規品ですよ」と売り込めるのです。もちろん、その印までパクられたらおしまいですが、QRコードで製品履歴がわかるようにしたらかなり効果的だと思います。

一方、海外でのアニメブームは正規品よりもグレーな製品が溢れており、アニメに憧れ興味がある人とそれでビジネスにしている人の接点、つまり、お見合いビジネス的な要素があり、そこでアニメへの更なる興味が生まれてくれればもっと深堀し、いつかは必ず「本物」に戻ってくるとみています。海外でアニメブームだといいながらその果実を得ている日本の会社は案外少ないと思います。そのあたりは取り締まるばかりではなく、どうやってビジネスを伸ばすのか、両面作戦で対応しないと文化とビジネスの融合はうまく調和できないと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年6月17日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。