投資のセンス

中学生から株式投資を始めて現在でも続けながらそれ以外にも不動産をはじめ、投資についてはいろいろ経験を積んできました。時折、「自分は株式投資で損をしたことがない」と豪語される方がいらっしゃるのですが、それは本当の投資をされていない方だと思います。例えば投資信託でプラスが出ているとか、あまり個別銘柄はやらないけれどたまたま何十年も昔に買った銘柄が何倍になっているといった話が多いのだろうと思います。もちろん、損をしたら投資のセンスがあるのか、と言われると全く違うのですが、損の仕方にもいろいろあり、肥やしになる損の仕方を学ばねばならないと思います。

日経にもコラムを持つ豊島逸夫氏は金(ゴールド)の専門家ですが、氏が為替の業務をやっていた時の勝率がコラムに書いてあったことがあり、うろ覚えですが、勝率は60%ぐらいだったと記憶しています。アメリカのファンドマネージャーは損どころかファンドを解散することもしばしば起きるし、ウォーレン バフェット氏が最近、パラマウント株で出した損失は2300億円規模ではないか(日経)と推定されています。つまり、投資をするには損とは背中合わせですが、5年、10年といったスパンで見ればそれこそ勝率6割ながらもトータルで増やしていれば勝ちだと考えています。

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そんな私も勝率で見れば5割ぐらいかもしれません。ただ、大勝ちする銘柄が一つあればほかの損を一掃できる状態なのです。また10万円の損が10本あっても200万円の勝ちが一つあればトータルで100万円の勝ちですよね。これ、1勝10敗ですが、結果はプラスになります。そう考えるべきなのです。例えば私はコロナの頃にあるカナダの銘柄を一株91セントで購入したのですが、今、12㌦を超えています。その銘柄は大きく増配し、配当は年間一株当たり40セントあります。(つまり買値から見ると配当率43%です。)私はそれを当時、数万株ほど買ったのでこれ一つでほかの損を帳消しにできるのみならず、ブックバリューに対する配当率と配当金がすごい水準になるのです。

ではどうやってお宝を探すのでしょうか?このブログを長年お読みの方はご存じかもしれませんが、私の投資先は金、銀、非鉄金属、オイル、ガスが7割ぐらい占めます。そしてその業界の甘い酸っぱいは嫌というほど経験してきたのです。何度も損切りをしたこともあるし、ナンピンしても下がり続けたこともあります。株価が1/10になったものもあります。この手の銘柄は癖が悪く、いわゆるボラティリティが非常に高い銘柄です。よって一般向けではないのですが、カナダはこの業種の上場銘柄が非常に多く、また、バンクーバーはジュニア マイニング企業(中小鉱工業企業)のメッカですのである意味、かなりアクティブなわけです。

では例えば上述の銘柄が91セントの時になぜ、そんなに思いっきりよく投資できたのかといえばこれ、ガス関連の会社で会社が倒産するような事態ではなく、単にガス相場が時の事情で大暴落したので拾っただけなのです。この手のやり方で銅の産出会社では何度も何度も利益を生み出してきたのも相場のサイクルに対して高いボラティリティで株価が5-10倍のレンジで動くのを体得しているからなのです。

今は銀に少しシフトをかけています。銀相場は金相場の数倍のボラがありますので銀を採掘する企業の株価は暴れ馬のような感じですが、コツをつかむとわかりやすいのです。

今日は投資のセンスと銘打ちました。そのポイントは業界を徹底して知ることだと思います。よく、株式投資をする方であれもこれもと見境なく上がりそうだと聞こえた銘柄を次々購入される方がいます。それでは儲からないのです。そうではなく、ある業種について熟知したうえで株価が今、どの水準にあるのか知ったうえで買い時か、売り時か、時を待つのか判断することが大切なのです。

例えば私は半導体銘柄は一切やりません。これもボラが高い業種ですが、私は投資対象としてわからないからやらないのです。ハイテク投資もほとんどやらないのはハードの時代からソフトの時代、そして高性能半導体の時代に変わってしまい、ハイテク銘柄そのものが爆騰する時代ではないとみているからです。

私がかつての職場で不動産のセクションにいた時、上司からこんなことを教えられました。「お前は東京の人間だから東京の物件に注目しろ」と。当時、西船橋にマンションを購入したことがあるのですが、上司が「おまえ、東京に注力しろといっただろう」と怒られてしまいました。東京の不動産のプロになれば千葉や埼玉には目をくれなくてよいというぐらいの勢いでした。その言葉は私にとっては格言であり、確かに今、東京で投資している不動産は全部徒歩10分以内だし、バンクーバーも全部同じエリアに収まります。唯一今回始めたシニア向けグループホームは車で30分かかりますが、その地域はもう何年も見続けてきて次の投資エリアは引き続きここだろうな、と考えられるほど熟知し始めています。つまり、非常に狭い範囲ながらその地域では絶対のプロになる、そういうことです。

投資のセンスはビジネスのセンスにもつながるのですが、一言でいうと「あぶはち取らず」にならないようにしたい、ということかと思います。そして常に情報を探り続ける、それが重要ではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年6月9日の記事より転載させていただきました。