上席コンサルタント コンサルティング部 乾 一文
ChatGPTを壁打ち相手に使うという利用方法も増えてきており、ただアイデアを出すだけの名ばかりコンサルタントは消えていくことが想定されます。つまり、アイデアをまとめて、クライアントに提出するだけのコンサルタントはもういらないということです。
では、今後必要となるコンサルタントはどういった要素をもつ人材なのかについて解説します。
コンサルタントはなぜ必要なのか
コンサルタントが求められる役割を一言で言うと「顧客の課題解決を支援する」ことでしょう。
顧客がコンサルタントに支援を求める場面として最初に思いつく場面は、顧客自身が自らの問題に気付いており、その問題を一人で解決することが出来ないので、その道のプロであるコンサルタントに支援を求めるというケースではないでしょうか。
しかし、現在では問題が明確であれば、ChatGPTどころか、インターネットで検索をすれば、問題解決につながる情報を見つけられるかもしれません。
今後、必要とされるコンサルタントは、インターネットやChatGPTだけでは解決できない課題を解決できる人材でなければいけません。つまり、顧客自身が問題の特定しており、その原因に気付いている場合はコンサルタントが求められる機会は少なくなっていくでしょう。
気付いていない問題や原因に気付かせる
それでは今後、コンサルタントが必要になる場面を考えていきます。
人は勘違いをする生き物です。間違った行動は事実を正しく認識を出来ないときに取ってしまいます。つまり、問題そのものや、本当の原因を間違って認識してしまうと、誤った対策を取ってしまいます。顧客自身が問題やその原因と認識することに対して情報収集を行い、既に対策を取っているが問題が解決しない場合です。
本当の問題や、その原因に気付いていない状態でChatGPTに問いかけをしても、問いかけ自体が間違った内容となり、正しい対策を導き出せないことになります。間違った対策を取ることで、現状を更に悪化させてしまうことは避けなければいけません。
今後求められるコンサルタントには、本人が気付いていない本当の問題と原因を気付かせたり、顧客と一緒に見つけたりすることが求められるのです。そして、その問題解決のために実行面においても支援できる人材である必要もあります。
コンサルタントが顧客の問題を解決する上で、ChatGPTやAIの活用を否定するのではなく、むしろ活用する場面は増えていくでしょう。顧客からヒアリングをした問題に対して、そのままAIやChatGPTからアイデアを取るのではなく、コンサルが関わることで顧客が気付いていない本当の問題や原因を特定した上で、AIを活用して対策のアイデアを出す事は有効です。
アイデアだけでなく実行までを支援する
AIのみではなく、インターネットからの情報を含めると、対策の候補は無限にあるので、情報や選択肢が多くなりすぎることで、反対に迷いになる場合があります。さらにはAIから回答が本当に有効であるかを客観的に分析することも欠かせません。AIからのアイデアは、そのまま鵜吞みにするのではなく、あくまでも仮説の一つとして活用を検討するという意識は持つ必要はあります。
また、対策はあくまで仮説ですので、対策を実行したことによる効果を見ながら、変更・修正していく事も必要です。
このようなAIからの回答の絞り込みと選択、効果の検証と修正・変更など、実行面での支援もコンサルタントに求められる能力になります。そのためにはコンサルタントにも経験がないとAIが回答した対策が正しいのかの判断も出来ません。コンサルタントもその領域において、自らも知識を蓄え、対策を考えながら経験を積むことは今後も変わらず必要でしょう。
その上で、AIやコンサルタントから言われた通りやったのに「うまくいかないのはコンサルのせいだ」という言い訳が顧客から出ることは避けなければいけません。なぜなら選択し、実行した対策の効果や事業の成果に対して責任を取るのは顧客自身だからです。
つまり、コンサルタントやAIから出てきた対策を総合的に検討し、実行するかの意思決定は顧客自身が行うことを促していくこともコンサルタントの重要な役割です。
自分で乗り越える力を持たせる
顧客が自分の意思決定に対して責任を正しく認識できなければ、AIやコンサルタントの支援を言い訳にすることに繋がり、対策の実行を継続できなくなることも起こりえるでしょう。顧客自身が責任を取りながら問題に立ち向かい、乗り越える力を持つために支援することがコンサルタントに求められることと言えます。
コンサルタントから出てきた対策が間違っていたことで会社が危機的状況になったとしても、残念ながらコンサルタントは責任を取ることが出来ません。なぜならコンサルフィー自体は一部返金できたとしても、事業の立て直しを行うのは顧客自身ですし、株主や顧客などのステークスホルダーに対する責任はコンサルタントには取ることは到底できないからです。
事業が継続すれば、必ず新たな問題が生まれ、その都度、問題の原因を特定し、対策を打っていかなければいけません。そして問題の特定や対策が間違っていれば、別の問題や原因を特定し、新たな対策を取っていく必要があります。残念ながら事業が継続していく以上、これらの行為に終わりはありません。
当然、顧客が成長を続ける過程で支援を継続する場合はコンサルタントも成長し続け、その場面における最適な対策の選択肢を提案する必要がありますが、最終的に全ての場面で意思決定を行い、事業を継続していくことは顧客自身である必要があります。
まとめ
AIの時代以降も必要とされるコンサルタントに求められる要素について話しました。
今後も必要とされるコンサルタントになるためのポイントは以下の通りです。
- 顧客が気付いていない問題を気付かせる
- アイデアだけでなく、顧客自身の選択と実行を支援する
- コンサルタントも自ら考え、経験を積む必要がある
- AIを選択肢の一つとして使いこなす
- 顧客に自分で問題を乗り切る力を持たせる
顧客と同様にコンサルタントもAIを活用する機会は増えていくでしょう。そして顧客が問題を正しく特定している場合はコンサルタントの活躍の場面は減っていくでしょう。
ただし、取っている対策がうまくっていない場合、その問題や原因を正しく認識出ていないことは多くあります。正しい問題やその原因に気付かせることや、対策の選択や実行を支援することは今後もコンサルタントに求められることとして変わりません。
そして、AIを活用し、問題に対する有効な対策を導き出すことは問題解決の可能性を高めることにも繋がりますが、AIから導き出した解決策が正しいかどうかを判断するためには、コンサルタント自体にも新たな知識の習得や経験が必要です。そして、顧客自身に問題を乗り切る力を持たせることもコンサルタントに求められる能力であります。
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乾 一文(Kazufumi Inui)
上席コンサルタント コンサルティング部。和歌山大学経済学部を卒業後、株式会社サンケイリビング新聞社に入社。女性をターゲットとした販売企画や営業職として22年間従事。2015年に中小企業診断士として登録すると、組織の課題を抱える企業が多いことに気付く。自身もマネジメントに悩んでいた経験から識学に出会い入社。