世界でダントツに生成AIを使わない日本

黒坂岳央です。

MicrosoftはAI at Work Is Here. Now Comes the Hard Partにおいて、職場における生成AIの活用状況を発表した。データが出ている国別で、日本は「最も最も生成AIを使用しない」ということが明らかになった。

AI at Work Is Here. Now Comes the Hard Partよりデータを抽出し、画像は筆者が作成

世界一使用しているのは中国で91%、生成AIの中心地の米国は71%、日本はなんとダントツ最下位の32%という数値になった。

頭脳労働において、もはや生成AIを使いこなすスキルは必須であることは疑いようもない。自分はこれまで、我が国の政府は新しいテクノロジーやイノベーションの理解を全く示さないということを理解していた。しかし、民間企業においてこの遅れが生じているということはITリテラシーや労働生産性の面で大変な問題が生じていることが分かる。

Ranta Images/iStock

日本人が生成AIを使わない3つの理由

ChatGPTが世界で大きな話題を呼んだのは昨年年始だ。新しもの好きの筆者は真っ先に飛びつき、毎日毎日使い続けている。

今年はますますAIが拡大しており、ChatGPTもドンドンバージョンアップをする。iPhoneからもアクセスが容易になることが決定した。また、12月からはいよいよMicrosoft Copilotが正式リリースされ、Copilot PCも各社から出揃う。間違いなく、生成AIは今世界で最もホットな話題の中心であることは誰も否定できないだろう。

こうした環境の中でなぜ、日本人は生成AIを使用しないのか? 理由は様々考えられる。

1つ目は技術の取得に時間がかかるためだ。ITに強い人は毎日試行錯誤を繰り返して、上手な使い方を訓練してドンドン上達していく。しかし、最初はうまくいかない。愚問愚答、という言葉がある通り上手に質問しなければ生成AIのポテンシャルを引き出す結果を得ることはできない。筆者も最初の方は「これなら自分がやったほうが早いな」と何度も歯がゆい思いをした。だが慣れればこれほど便利なものはないと分かる。だが慣れるまでは大変だ。

2つ目は企業の使用規制だ。BlackBerryの調査で日本企業の72%が生成AIを職場で使用を禁止、または禁止を検討しているとわかる。これでは使いたくても使えないし、「生成AIは危険」という誤った意識が刷り込まれてしまう。だが労働生産性が低く、仕事の効率が悪い上に労働人口も減少しているのにこのような状態が続いて本当にいいのだろうか?機密情報を入力してはならないのは理解できるが、だからといってすべてを完全禁止にしてしまえばその代償として技術の発展や生産性が犠牲になってしまう。そのことを企業経営者は理解するべきだろう。

3つ目は生成AIのすごさを分かっていないからだ。熟練しない内に触っても「なんだ、こんな程度か」とそのポテンシャルを見誤ってしまう。自分は諦めずにしつこく使い続けて熟練して技術を磨いたが、既存の業務で忙しく働く人に「一時的に効率が落ちてでも、絶対に使いこなせ」と言いづらい現実がある。だから生成AIは上級者からデモや使い方を学ぶことを勧めたい。一度、そのすごさを理解すれば「これは時間を使って技術を磨く価値がある」とわかるはずだ。

新テクノロジーに触れる自己投資

新しいテクノロジーに積極的に触れることは、自己投資である。「自分はITに興味ないし」で片付けてしまうと、大きなチャンスを失うことになる。

あらゆる頭脳労働型ビジネスは、もはやIT抜きには考えられない。ITを軸にビジネスを設計する必要がある。その根幹のシステムをずっと旧態依然のやり方を続けていては、当然労働生産性の面で国際競争で敗北を喫する。特に生成AIはこの差をこれまで以上に開いてしまうポテンシャルがある。今後、使える、使えないで大きな差がついてしまう。そういう意味で、流行り始めてまだ日が浅い今のうちに、総力を上げてキャッチアップするべきなのだ。

個人レベルでも意識を変えよう。PCでもスマホでも値段ばかりを気にして、中古の激安機ばかりを使うことはおすすめしない。

確かに最新のガジェットは円安もあってどれもとても高くて躊躇をしてしまう。だが、先端テクノロジーの動作には半導体チップの性能も大きく関わってくるため、自己投資として多少背伸びをしてでも良いものを買ってドンドン試すべきだ。そこで培った技術は必ず仕事で役に立つ時が来る。そうなれば労働市場で付加価値を持つ人材になれるし、そうであることをPRするべきだろう。

誰しも専門分野の知識をアップデートするものであり、職場でも積極的な学習が奨励される。会社によっては外国語の取得を勧めるところもある。だがITはそうではなく、個人の自主学習に委ねられているところは多い。そのため、すでにできる人、できない人の間には埋めようがない格差が生まれている。

今後は生成AIでこの差は取り返せないほどの差になるだろう。逆に言えば日本で生成AIを使いこなす人材は付加価値を高められるといことを意味する。自分が格差のどちら側へいくか? それはこれからのテクノロジー理解にかかっているだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。