「日本の生活の余裕」と「途上国の厳しさ」の実態を日本人は何も知らない

谷本 真由美

日本人のXの人気スレッドに、ここ最近はインプレゾンビというアカウントが湧いてきており、かなりめんどくさいなぁと思っている方が多いでしょう。

インブレゾンビと言うのは、Xの人気の投稿やスレッドに意味不明な返答を送り付けて、他人の投稿人気にただのりして自分の投稿を見る人の数(インプレッション)も伸ばしてお金を稼ごうとするアカウントのことをいいます。

私の近著『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、海外のネット事情は日本と色々異なるので、インプレゾンビ出現に関しても海外の事情を知っておくと様々なことが読み取れます。

途上国のインブレゾンビの人々は、日本のXユーザーに次々と嫌がらせのような絵文字や挨拶を送りつけていました。

彼らは日本人とSNSの使い方が違うので日本人が何を求めているかわかりませんでした。ある日本のユーザーが、彼らのうち数名に、地元の食事や風景を投稿したらもっと人気になるよと教えてあげたのです。

彼らは日本人が自分の国の祭りや食べ物の写真や動画を見て喜ぶということが全く理解ができなかったのです。

先進国だとSNSの主要目的になっている他の国の文化や風習を見て学ぶとか違いを楽しむという習慣がないからです。

異なるものや、他者に対する興味が存在しないからです。彼らの興味と言うのは、自分の生活範囲の中での人間関係とか、現金をいかに稼ぐかと言うことであって、異なる文化から何かを学ぶとか、自分の知識を豊かにすると言う余裕がないのです。

さらに日本人の場合は、ナイジェリアなどの途上国の動画や写真から、その国の本当の経済レベルや人々の暮らしの知恵などを学び取ろうとしますが、途上国の一般の人々にはそういった視点がありません。

ですから、例えば、日本を含め先進国の人々はあくまで楽しみのための旅行として砂漠に行ったり、山に登ったり途上国の僻地の村の祭りを見に行ったりします。

これは好奇心を満たし、日常とは異なる体験をして、自分の人生を豊かにするための活動です。また普段と違う環境に見ようことで、新たなアイディアを得られると言うこともあります。

ところが、途上国の人々にとってはわざわざ不便な山に行ったり、田舎に行ったり、古い祭りを無理と言うような活動が楽しみと言う風にはならないのです。

彼らが旅行先として好むのは、都会の人工的なビルだったり、ディズニーランドだったり、人工的なアミューズメントパークやクラブのド派手なパーティーです。

日本の生活は実はあたりまえではない? kokouu/iStock

ですから、彼らの間ではキャンプ用品やアウトドアグッズの需要がありませんし、ヒマラヤ登山や今後の川下りの話を講義で行うイベントも人気はありません。

ところが特に欧州の北部の国々に行きますと、ある程度の教育レベルの人々の娯楽と言うのはハイキングや山登りだったりしますし、大学や研究所で行われる冒険旅行の話はかなり人気があります。

美術館や博物館では、南米やアフリカの伝統的な衣装や祭りの展示が行われます。

こういった欧州北部のある程度の教育レベルの人々にとって人気がある日本のコンテンツというのが古民家であったり、陶芸とか城とかだったりするわけです。

これはインプレゾンビをやらざる得ない途上国の農村の人や低賃金の人々だけではなく、実は新興中流層や上流階級も似たところがあります。

彼らは先進国の人々が好むようなアウトドアとか通な美術展を楽しむ習慣がありません。アンティークにも興味がない人が多い。

とにかく目立ってわかりやすいものではないとお金を使いません。

例えばロレックス、金色の車、ブランドロゴがドーンと書かれたカバン、巨大なアクセサリー、量の多い食事などです。知る人ぞ知る、ではなく「誰でも知っていてわかりやすい」出ないとダメです。

これはアニメや漫画にも似たところがあり、彼らが好むのは「ドラゴンボール」や「ワンピース」であって、「異世界失格」とか「異修羅」ではないわけです。

これはインバウンドのアイディアを考える場合にも重要で、彼らは北米や欧州の富裕層が好む渋い食事やイベントや古民家は嫌いで、新しくて単純なものが好きです。看板やパッケージも派手にしてわかりやすくしないと刺さらないわけです。

【参考記事】