独裁政権を維持するには司法とメディアを支配下に置くこと
一つの政権が国を長期支配するのに重要なポイントは、司法と報道メディアを支配下に置くことである。それをラテンアメリカで完璧に行なっているのが、独裁国家のキューバ、ベネズエラ、エル・サルバドル、ニカラグアである。
例えば、ベネズエラではチャベス前大統領は政府に批判的なメディアは法的に理由をつけて閉鎖させるかまたは政府の支配下に置いた。例えば、ラジオは33局、テレビは1局が閉鎖を余儀なくさせられた。また新聞記者も多くが国を去った。
アルゼンチン前政権のお抱え報道メディア
アルゼンチンで昨年12月にミレイ大統領が登場するまで、延べ16年続いたキルチネール派の政権で政府のお抱えメディアとして庇護を受けて来たのがテラム(TELAM)である。テラムは全国にネット網をもっている国営通信であった。同通信社が発信する政治記事は常にキルチネール派の姿勢を擁護する報道になっていた。
怖いのは、テラムは一日に500本の記事を地方紙や世界の報道機関など800カ所に配信していた。ということで、政府が行っている政治について好意的な内容になって政府のやることを宣伝していたということだ。また報道写真も日毎に200枚発信していた。
自由至上主義者のミレイ大統領はテラムを閉鎖
ミレイ大統領は大統領選挙戦の時からテラムを閉鎖することを公約していた。そして3月にそれを正式に発表して同社の社屋を閉鎖した。閉鎖したのも2つの理由からである。中立的な姿勢での政治報道に欠けるということ。更に、今年もこのまま営業を継続すれば60億ペソ(10億円)の赤字が見込まれるという理由からである。
テラムは1945年4月に創設されたが、キルチネール派のが政権に就いてからテラムは同政権の報道機関という役目に甘んじて来た。そうすれば、政府からの公的資金もより多く支給されるからである。ところが、昨年12月に自由至上主義者のミレイ氏が大統領になると、左派で統制経済路線を歩んで来たキルチネール派のお抱え報道機関が存続することが許されないとミレイ大統領は判断した。この影響で、全国に支社をもって報道していた755名の従業員も解雇された。
スペインもキルチネール派政権と同じ道を歩んでいる
スペインでも現政権のサンチェス首相はキルチネール派と同じ道を歩んでいる。そこで、彼がお抱えの報道機関として支配下に置いたのが、民主化以降スペインの代表紙であったエル・パイス(El País)だ。
同紙の政府に関係した報道内容は真実を歪めたものになっており、今では事実を報道するというジャーナリズムの精神とは程遠いものになっている。だから、創業時から成長期まで活躍した記者は同社を出て特に独立系のデジタル紙で活躍している。同様に国営放送や民放1社も政府のお抱え報道機関に変身している。