2022年10月の品川区長選挙では誰一人当選しなかった。これは、有効票の総数の4分の1に達する候補者がなく、当選人が決定できなかったことによる。公選法の規定に基づくものだ。
その後、12月に再選挙が行われ、この選挙では当選人が決定した。なお、この再選挙は決選投票ではなく、すべてリセットし、一からやり直しをする選挙であることに注意が必要だ。
さて、今回の都知事選では56人が立候補した。もしも大きく票が割れれば、同様の事態となる。
東京都の有権者の総数は約1,150万人なので、投票率60%だとすると、一位の得票が170万票を割ると、当選人が決定できない事態となる。白票などの無効票は有効投票にはカウントされないので、これは、すべて有効投票とした場合の数字である。
さて、通常、当選者の得票には、一定数、死に票を嫌った有権者の投票が含まれる。
有権者の一部は、自分が推す候補者が当選しそうにない時、死に票となるのを避けるため、当選しそうな候補者の中から、よりましな人に投票することがある。
もし、こうした人々が誰も当選しない可能性があることに気づき、やはり自分が推すべき人に投票するという行動に出れば、一位の得票は減少することとなる。
こうした動きによって一位の得票が減じ170万票を割れば、誰も当選しない事態となる。
また、有権者の一部には、自分が推す候補者は当選しそうにないことから、投票所に行かず棄権する人がいるが、こうした人々が誰も当選しない可能性があることに気づき、やはり自分が推す人に投票するという行動に出れば、投票率が上昇する。
また、投票所に出向くが、抗議の意思を表明するためか、白票など無効票となる投票をする人がいるが、自分が推す人を見定め記入すれば、有効投票となる。
もしも、こうした動きが地滑り的に生じて、投票率がまさかの80%に上振れすると、230万票を超えなければ当選できなくなる。
今、有権者のほとんどは誰も当選しない可能性があることを知らない。
多くの人がこの可能性に気づいたとき、今回の都知事選の様相が、ある程度変化するのではないだろうか。
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中村 哲也
団体職員(建設分野)