愛知・新城市三河大野で大正時代にタイムスリップ!

愛知県東部、新城市をドライブしています。

ドライブといいながら駅にやってきました。ここはJR飯田線の三河大野駅です。大野地区は今は新城市内の一集落になっていますが、かつては養蚕業が盛んだった八名郡大野町の中心駅でした。

この時間は電車も来ず静まり返っています。飯田線は新城駅より北側はぐっと運転本数が減ってしまいます。

今は鄙びた一集落になってしまっていますが、先述の通りかつては養蚕業や林業が栄えて賑わいを見せており、富の集まる場所でした。富の集まる場所には何ができるか。そう、銀行です。

こちらはかつてこの地に本店があった「大野銀行」の本店です。大野銀行は明治29年にこの地に設立され、大正14年にこの本店を建築しました。重厚感溢れる洋風建築ですが石造りではなく柱と外壁は鉄筋コンクリート造で床や屋根は木造となっています。小さな集落の中にどっしりと構えるように建つ洋風建築はひときわ存在感を放ち、町のシンボルとして親しまれています。

大野銀行はのちに東海銀行(今のUFJ銀行)に統合され、その後は東三信用組合を経て豊川信用金庫の出張所として使用されてきました。しかし利用客が減少したことから平成18年に閉鎖されてしまいます。民間の会社がこの建物を買い受けてリニューアルし、現在はカフェギャラリー「大野宿鳳来館」として使用されています。平成21年1月には国登録有形文化財に登録されています。

右から「美術珈琲」と掲げられた看板がいい味出しています。

店内はこんな感じ。入り口に入るとカウンターが広がりここがかつて銀行であったことが容易に想像できます。職員が業務を行っていたスペースを改装してダイニングテーブルを置き喫茶スペースにしています。ちょうど一つ一つがなんともレトロで味わい深いですね。この地は林業が盛んだったこともあって木材をふんだんに使用しているのも特徴です。

2階がギャラリーになっていて、コーヒーを待つ間、ギャラリーを見て回ることができます。せっかくなので行ってみることにします。

レトロ感溢れる電話機が置かれていました。電話番号は一番。かつて大野銀行が町の産業の繁栄を支える中心的存在であったことが窺えます。

2階の一室にあるのは大正時代の画家、竹久夢二の作品を飾る部屋。

かつての会議・商談スペースにも絵画が並べられています。なんだか老舗ホテルの宴会場みたいな雰囲気です。紅いカーテンがいい味出してますね。

階段を下りて自席に戻るとコーヒーゼリーとバニラアイスが私を待っていました。コーヒーゼリーはこの店で淹れたコーヒーで作った本格派です。

「鳳来館」HPより。

コーヒーはサイフォンを使って抽出します。ドリップ式に比べ抽出ぶれが少なくなり味に差が生まれにくくなるほか、香りも豊かになります。あとはまぁ、サイフォンってなんかすごいカッコいいんですよね。これだけでここのコーヒーうまいだろって思ってしまいます。

席から店の入り口を眺めてみます。銀行の職員がカウンター越しに来客の応対をしていたことが想像できます。ここで飲むことができる紅茶などがカウンターに陳列されており、購入することも可能です。

鳳来館の裏に回ると蔵があります。明治時代に大野銀行ができたのと同時に建てられたと言われており、先ほどの洋館より歴史が古いです。当時は重要書類の保管庫として利用されていました。現在はアートギャラリーとして仏像や東海道五十三次の絵巻などが飾られています。

少し離れた敷地内にはかつて料亭として使われていた古民家があります。大正時代料亭菊水(通称とりや)として営業していました。これだけ立派な料亭があったことも、かつてこの地が養蚕などで繁栄を極めていた証だと思います。

菊水は肉屋も合わせて営業していたとのこと。多くの人たちがここで高級肉料理に舌鼓を打っていたことが想像できます。

大正期、大いに繁栄した新城市大野地区界隈。今は小さな集落ですがその繁栄ぶりを偲ぶことができました。鳳来館でお茶を飲みながら、しばし大正時代へのタイムスリップを楽しんでみてください。

鳳来館について|大野宿 美術珈琲 鳳来館|愛知県新城市鳳来にある大正モダンの雰囲気のあるギャラリー喫茶
1924年(大正13年)に大野銀行本店として建設された鳳来館は、戦後は「東海銀行」に名前を変え、豊川信用金庫鳳来支店三川大野出張所として使用されておりました。

編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年6月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。