士業専門コンサルタントが教える、補助金コンサルタントの活用 (横須賀 輝尚)

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「法律に関するコンサルティングを依頼するとなると、ほとんどの場面で難関資格を保有する”士業”と呼ばれる専門家を思い浮かべると思います。しかし、実は補助金のコンサルタントに資格は不要なんです。それだけに、選ぶ相手を間違えないようにしたいですよね。」

そう語るのは士業向けの経営コンサルタントで自身も士業(特定行政書士)である横須賀輝尚氏。同氏の著書『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』から、無資格でも活動可能な補助金コンサルタントの実態について、再構成してお届けします。

補助金コンサルタントは稀有な存在

優秀な補助金コンサルタントを見つけたら、絶対に手放さないようにしてください。なぜなら、補助金業務は高度。法律関連の手続きの中でも最高難易度を誇るひとつの業務だからです。

難しくて面倒なんです、補助金申請って。手引きだけで数百ページあるものが存在するくらい。だから、できる人は貴重なんです。

まず、補助金そのものの性質について改めて。助成金が条件を満たせば確実に受給できるのに対して、補助金は「採択」というプロセスがあり、最終的に補助金を出すかどうかは行政が決めます。

ですから、要件を満たしているからといって、絶対に出るものではないのです。そして、補助金は後払い。つまり、使った費用に対して支払われるものなので、出費は先になります。

では、何が採択されるかされないかの差になるかといえば、「書類の内容」の差。つまり、補助金コンサルタントの実力の差なのです。補助金申請については、それだけ属人的な、いわゆる職人芸になります。ですから、繰り返しになりますが、補助金業務を専門的に行える人は、本当に貴重なのです。

注意したいのは、本当に誰でも簡単にできる業務ではないということ。例えば、行政書士や税理士のサイトに「補助金申請も受け付けます」と、事務所の強みを謳っている士業がいますが、これは怪しいところ。

これを言ったら本当に業界に総スカンだと思うのですが、事実なので言っちゃいますけど、「受け付ける」のと「申請して受給できるレベルの仕事ができる」のは大きく違います。

だから、表記している事務所にはきちんと確認すべきです。「本当に補助金申請の実績あるのですか?採択率はどのくらいですか?」って。

少なくとも、ただ「受け付けます」の事務所は、あなたの会社にとって最適な補助金を探すこともしないでしょうし、言われたら渋々受けるというのが関の山(中にはちゃんとできる事務所もあります)。この点、注意が必要です。

補助金業務を依頼するなら顧問契約がベスト

補助金業務の報酬体系は、着手金+成功報酬というところがほとんどです。中には着手金なしのところもありますが、補助金が後払いになる以上、着手金のないコンサルタントは、自信があって経営に余裕があるか、あるいはその逆で自信がないから着手金が取れないのかのふたとおりの場合があるので、そのあたりは様子を伺いましょう(さすがに直接は聞けないと思いますので)。

補助金業務は、スポットで依頼することも、顧問契約を結んだ上で依頼することもできます。普通に考えれば、スポットで必要な補助金だけ申請をお願いするというのがベストのように見えますが、これは顧問契約を締結するのがベスト選択です。理由は次のとおり。

(1)補助金の情報を探すのが大変[1]
助成金の内容が変わるのは、年1回。毎年4月に厚生労働省から発表されます。1年間は原則として変更がありません。これに対して、補助金の募集(公募といいます)は、おおよそのスケジュールは決まっていますが、確実性がありません。

ですから、スポットで依頼するというのは、あなたが情報を探すということになり、これが大きな負担になります。顧問契約であれば、コンサルタントが情報を探してくれます。あなたの負担はありません。

(2)補助金の情報を探すのが大変[2]
一般的に「補助金」というと、経済産業省から出ている補助金のことを指します。「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」などがその代表例です。ところが、補助金が出るのは経済産業省からだけではなく、市区町村からも出ることがあります。

しかも、全国の市区町村で種類が異なる。更に募集期間が2週間だけ、みたいなスピード勝負の補助金なんかもときどきあり、やはり補助金の情報を追うのは大変で、その情報収集から任せられるコンサルタントと顧問契約を結ぶべきなのです。

(3)インハウス(内製化)では、組織が疲弊する
補助金申請は、単発でも大変な業務です。ですから、社内でこれを処理しようとしても、相当専門性の高い知識が求められるわけで、いち社員に任せるのはかなりの重荷です。まず、内製化は難しい。外部のコンサルタントに依頼するのがベストになります。

(4)補助金は、長期的・計画的に実施することが肝要
要は、「補助金をもらい続ける仕組み」をつくることがベストです。スポットで依頼することも可能ではありますが、経営の状況を都度伝えなければならず、時間と労力が取られます。

そのほか、どの時期にどの費用を支払うかなど、ひとつひとつ補助金の要件に合わせて判断しなければならなくなり、やはり計画的・長期的に任せられるコンサルタントと組むのが良策。別の言い方をすれば、あなたの補助金申請について、主導権を握ってくれるコンサルタント。これがベストです。

補助金コンサルタントの選択基準

コンサルタントの選択基準は、言うまでもなくやはり実績です。どの補助金をどの程度こなした経験があるのか。採択率はどの程度か。これも秘密の質問ですが、補助金コンサルタントの実力を見抜く質問をひとつ。

「一般的な採択率はどのくらいですか?」

とまず聞き、回答が出たら

「あなたに依頼すると、採択率はどう変わりますか?」

と聞くもの。「一般的な採択率は半分くらい。うちなら7〜8割は採択されます。」こうやって自信を持っていえるコンサルタントに長期で依頼することができれば、会社はより豊かになり、様々な投資も可能になることでしょう。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年6月18日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。