ないよりましと考えるべき将来の年金

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私は海外居住者なので年金の支払いは任意だったのですが、まぁせっかくなのでと思い、ずっと払い続けてきました。今回めでたく480か月を過ぎ、年に一度まとめて引かれる年金の年払いから解放されました。私の場合は日本の企業を退職後、当地で独立してからは国民年金ですから年間約20万円をせっせと払い込んできたわけです。(海外在住者の場合はなぜか年払いであります。)

この480か月の到達感は住宅ローンの完済のような感慨ひとしおというべき嬉しさでした。22歳で大学卒業をしてから40年ですからね。まぁこのあたりで普通の人なら「ご苦労様、そろそろいいんじゃないの」と肩を叩かれるのでしょうが、私はまだ、ちと早いと思っています。

年金をいつからもらうか次第ですが、私は基本的に65歳からさっさと貰おうと思っています。もちろん、いつまで生きているかわからないこともありますが、年金の案内に「受給を先送りすればするほどもっともらえる」という甘言についその気になりそうになるのですが、それよりももらったお金を運用した方がよいリターンになるだろうと考えたわけです。もちろん、腕次第ですが。

日本の新NISAと似たような投資収益に対する無税の仕組みがカナダではTFSAと称するもので、毎年おおむね一人当たり6-7000㌦の枠が増えるようになっています。健全な個人財政を持っている方は基本的にはこのTFSAの枠が増えた分を満額預けておいた方がいいと思います。

そしてもう一つのカナダの仕組みが老齢年金(RRSP)というもので65歳以降に引き出せます。この枠組みにお金を移すと移した金額だけその年の税務控除ができます。だいたい私は年間2万ドルぐらいこの枠組みに振り替えますので税の先送りができるのです。

よく聞かれるのが投資収益無税枠のTFSAと老齢年金のRRSPでは何をどう買うか、という質問です。私はFPではないのであくまでも個人的な意見ですが、TFSAではキャピタルゲイン狙いの投資、RRSPでは配当株を購入するというのが王道だと考えます。

なぜならRRSPは引き出す時、引き出した金額が所得に計上されるので運用した収益を含め全部課税対象になります。一方、TFSAはいくら稼いでも税金がかからないのですから言葉は悪いですが、将来の大化け株候補を持っておくのが正解になります。

これら国の制度を利用したものを含め、私の老後に向けた基本方針は仮に病気で寝込んでいても優雅に海外旅行に行っていても、かったるいから会社に行かなくてもお金が入ってくる仕組みを作っておくことであります。そのためにお金が入ってくるルートを3-4つぐらい確保しておくことがポイントだと思います。

日本で「年金では暮らせない」と嘆く方々が多く、更に街頭インタビューで30〜40代ぐらいの方に「年金どう思いますか?」と単刀直入に聞いたら「僕らの世代ではもらえなくなると思います」というご意見が相変わらず多いのにはびっくりしました。

もらえなくなるような年金の制度設計はないはずですが、基金の部分が減る公算はあります。その場合、支給が例えば今の65歳から70歳とか75歳になるとか、金額がやや減る公算はありますが、積立損ということにはならないとみています。

事実、昨年の報道では年金運用をするGPIFが23年度にあげた運用収益は45兆円、過去5年で見ても106兆円儲けており、これは設定されている運用目標の6倍です。これにより現在の仕組みで年金を支給できる計算上の各個人向けの支給額は約5%ポイントぐらい高くなっているのです。もちろん、良好な運用がずっと続くわけではないですが、我々の知らぬところで巨額の稼ぎをしていて年金制度の根幹を支えているとも言えます。

ちなみに私が新入社員の頃は厚生年金とか厚生年金基金ってなんだ、と思ったものです。会社が半分払ってくれるありがたみなぞ全く感じたこともなかったのですが、国民年金になり、企業年金のように「マッチング」がないので「ありゃ、これは積み立てが増えないぞよ」とようやく感じたぐらいです。

そもそも「年金暮らし」なんていうのはドラマの世界か、2階建て3階建ての企業年金制度をフルで享受できるサラリーマンをきっちり勤め上げた方の話です。また、年金にすがるという時代から賢いお金の貯め方、増やし方の書籍や講習が巷にあふれるようになり、マネーリタラシーが少しずつ高まっているので様々なところに投資をして若い時分には多少損をしてでも体で覚えていくことが大事でしょう。

カナダでもそうですが、国の制度年金だけで将来ずっと食っていけるなんて思っている人は誰もいないのです。カナダで老後、いくらいりますか?という話が数か月前あったのですが、1.7ミリオンドル(約2億円)というとんでも金額が出ています。日本の2000万円の10倍です。そのために多くのカナダ人は資産形成の一環で住宅を無理してでも購入するケースが多いわけです。

カナダである程度の年齢になり、施設などに入る場合、愛着ある自宅を売却して億円単位のお金を手にして「これであと20年は大丈夫」なんていう話をよくしているわけです。逆に家無しの人は他の代替資産がないと本当に厳しくなるとも言えます。

日本で報じられているように30〜40代で貯金が2-300万円しかないというのは厳しいです。お金に働いてもらって複利運用するといった工夫が欲しいところですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月7日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。