日本の対外直接投資、対内直接投資の残高について、相手国別の推移を確認してみます。
1. 対外直接投資残高の推移
前回は、日本の対外直接投資残高と対内直接投資残高について、相手国別のシェアをご紹介しました。どちらも、アメリカ、オランダ、イギリスの存在感が大きいようです。
日本は対外直接投資に対して、対内直接投資が極端に少ない特徴があります。
このような特徴は、他国も同様なのか、今回からは国際比較をしてみたいと思います。
まずは、対外直接投資残高(Foreign Direct Investment, Position, Outward)について、主要先進国の推移から眺めてみましょう。
図1は主要先進国の対外直接投資残高の推移です。
それぞれの国が海外に対して持つ対外直接投資による残高(ストック)をドル換算したものです。
海外に持つ金融資産の一部という意味にもなりますね。
やはりアメリカが圧倒的な水準で、なおかつ増加傾向で推移しているようです。
続いて、オランダ、中国、カナダも大きな規模となっていますね。
日本は増加傾向ですが、ドイツをやや下回る水準で推移しています。
2. 対外直接投資残高の国際比較
続いて、対外直接投資残高の国際比較です。
図2が2022年の対外直接投資残高の比較です。
日本は1.95兆ドルで、OECD38か国+中国の中で、7番目の水準です。
先進国の中では対外直接投資が多い方になりますが、経済規模からするとやや順位は低いようですね。
2022年は急激に円安が進んだ年でもあるので、その分割り引かれた数値になっている事にも注意が必要です(ただし、2022年は他の多くの国でもドルに対して自国通貨安となっています)。
対外直接投資残高 2022年
39か国中 単位:ドル
1位 8.00 アメリカ
2位 3.40 オランダ
3位 2.80 中国
4位 2.29 カナダ
5位 2.17 イギリス
6位 2.10 ドイツ
7位 1.95 日本
8位 1.61 ルクセンブルク
9位 1.49 フランス
10位 1.31 スイス
人口や経済規模からすると、オランダやルクセンブルク、スイスの水準がかなり高いようです。
人口1人あたりの直接投資残高については、別の機会にご紹介します。
3. 対内直接投資残高の推移
続いて、対内直接投資残高(Foreign Direct Investment, Position, Inward)の推移を見てみましょう。
図3が対内直接投資残高の推移です。
海外への各国の負債という意味にもなります。
やはり、アメリカ、中国、オランダが非常に高い水準で、増加傾向が続いていますね。
一方で、日本は相対的にかなり低い水準で推移しているようです。
対外直接投資ではフランスやイタリアを上回っていましたが、対内直接投資ではかなり下回っているようですね。
4. 対内直接残高の国際比較
次は対内直接投資残高の国際比較です。
図4が2022年の各国の対内直接投資残高の比較です。
アメリカが約11兆ドルと、対外直接投資を大幅に上回る水準に達しています。
日本は0.23ドルで、韓国やイスラエルを下回り、先進国の中ではかなり低い水準となっています。
対内直接投残高 2022年
39か国中 単位:ドル
1位 10.99 アメリカ
2位 3.50 中国
3位 2.78 オランダ
4位 1.50 カナダ
7位 1.09 ドイツ
9位 0.90 フランス
14位 0.46 イタリア
18位 0.25 韓国
21位 0.23 日本
国際的な順位は、概ね対外直背投資と同程度な国が多いようです。
このような国は海外へ投資もするし、海外からの投資も相応の規模で集めているということが言えそうですね。
日本は対外直接投資残高が2022年で1.9兆ドル程度だったのに対して、その9分の1程度しかない事になります。
5. 先進国の直接投資の特徴
今回は、OECD各国と中国についての対外直接投資残高、対内直接投資残高についてご紹介しました。
どちらもアメリカが圧倒的な水準ですが、オランダや中国の存在感も大きい事がわかりましたね。
一方で、日本の場合は対外直接投資はそれなりの規模ですが、対内直接投資が極端に少ないという特徴になるようです。
各国とも双方向的なグローバル化が進む中で、日本だけアンバランスな状況にある事が窺えます。日本企業は積極的に対外直接投資を進める一方で、海外からの投資が少ない歪な関係性ですね。
日本の独特な商習慣、言語の壁、極端に高かった物価比率、海を隔てた立地、距離の壁など、様々な原因も考えられますが、他国と比べて異なる状況にある事は認識しておいて良いように思います。
昨今の円安を踏まえて、これがどのように変化していくのか大変興味深いですね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年7月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。