中国がもがいています。気のせいかもしれませんが、習氏が3期目に入って以降、より精彩を欠いているように見えます。2022年10月の党大会直前、これで習氏は盤石の体制となり、身内にも敵は不在とされました。習氏は人事面において主導的な采配を行ってきていますが、自身の周りをYesmanで固めてしまったことで不都合な情報が入らなくなったばかりか、問題解決能力が欠如していることがより明白になったように見えます。
その一つが指導部と国民との温度差です。国民は中国経済の大躍進と一種の消費ブームに沸きあがり、日本でも一時期、爆買いが話題になりました。また海外に不動産を求めるケースも多く、当時私の周りにも中国人のとてつもない金持ち、特に旦那が中国に残るも子供と一緒に住む奥様方がカナダで暇を持て余してブイブイ言わせていました。残念ながら英語のコミュニケーションがほとんどできないことで彼女たちはカナダにいても一部の中国人富裕層同士の非常に狭い世界で生活をしていたようです。そんな彼女たちも今はすっかりお見掛けすることはありません。
あれを中国版バブル経済のピークだったと考えることも可能かもしれません。とすれば中国の今は日本でいう1990年代から2000年代初頭なのでしょうか?
昨日発表になった中国の4-6月期GDPは4.7%成長で1-3月の5.3%から大幅ダウン、また事前予想も5.0-5.1%とみられていたのでかなり失望する内容となりました。特に個人消費が弱々しく、経済の基礎体力が相当弱っているとみて取れます。
また、本来であれば中国統計局はGDPの発表に合わせ記者会見を開くのですが、今回はそれを取りやめています。数字が悪いからということもあるでしょうが、15日から4日間の日程で中国の重要会議、第20期中央委員会第3回総会(三中総会、ないし三中全会)が開催されていることがあり、そこに水を差さないような配慮をしたのだとみています。
中国の重要会議はわかりにくいのですが、党大会の後、一中全会、二中全会、三中全会と続きます。一中と二中は主に人事の会議になります。今回の三中が経済の会議となります。よって習近平氏がどのような方針を打ち出すのかが注目されているわけです。
事前にわかっているのは「改革の全面的な深化」と、「中国式現代化の推進」が議題となっています。中国式現代化は中国独自の経済モデルの話で不動産に代わる新たなビジネスモデルの構築が内包されるだろうと予想されています。しかし、習氏はかつて経済発展の芽となる産業を自ら次々と摘み取ってしまった上に海外からの厳しい規制の枠で中国企業に自由度が少なく、発展の余地が限られてしまっています。
鉄道建設を中心としたインフラ整備など国家資本主義が機能しているように見えた時代がもありましたが、結局ひずみが大きく、その修正に時間を要しているというのが私の見方です。一方、失業率が高止まりし、仕事が十分にない中でロボットや機械化を更に推し進め、職にありつけない状態が進んでいます。例えば国家主導でドローンビジネスを進化させており、農業などの作業効率性は大きな改善がなされる一方、労働力を吸収できるところが無くなるという自己矛盾を起こしてしまいました。
自由型経済の場合、民間主導で新たなビジネスが次々と生まれ、資本移動と新たなる資本投下がなされます。ところが、国家主導の場合、誰が責任を取るのか不明瞭なまま、国家の大方針の下、大規模な資本投下が行われるわけです。これが常に正しいのであればよいし、バランスが取れたものであればなおよいのですが、中国型経営にはアクセルばかりでブレーキがない暴走機関車のようなところがあり、それが歯止めなき膨張を繰り広げる問題がしばしば起きているわけです。
鉄道建設も2023年だけでも2700㌔が新たに開通しています。不動産もこの1年間で完成在庫面積が24%も増えています。鉄道インフラにしろ不動産にしろ何年も前からスローダウンすべき産業とされてきたのに今でも増え続けているわけです。しかし、いらない鉄道や誰も住まないマンション群を作るために雇用が創出されたとすれば自虐経済といっても過言ではないでしょう。
国家は破綻するか、と言われれば弱小国では経済的行き詰まりは起こり得ますが、中国のように巨大国である程度の自己完遂能力を持ち、自律型経済力を持つところは貧困問題は内在すれど破綻は通常しません。あるとすればソ連崩壊と同じようなシステム上の問題が明白になった時か、旧来の流れを変えるだけの国内圧力が生じた時に国家の体制が転換するのがシナリオとして起こりうるケースだと思います。
但し、私は過去10数年以上、中国は崩壊しないと申し上げてきました。現段階では崩壊するシナリオを描くほどの創造力は湧き上がらない、つまり、国民生活はじり貧ながらも真綿で首を絞められているような感じでしょうか?日本も30年前後、さまよったわけですが、その時に日本崩壊などは話題にもならなかったし、そういう気配もなかったのです。中国も同様に長くもがくのだと思います。あとどれぐらい続くかは想像できませんが、10年とか20年といったスパンになるような気がします。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月16日の記事より転載させていただきました。