オワコンと言われるデスクトップPCを使い続ける理由

黒坂岳央です。

デスクトップパソコンが売れない。

マイボイスコム株式会社の発表した「パソコンの利用(2023年2月1日~5日実施)」に関する調査によると、調査を行うたびにドンドンとデスクトップパソコンの所有率は低下していることがわかる。10年前はデスクトップとノートが拮抗していたことを考えると、これはもう「時代の流れ」と言えるかもしれない。

自分自身、根っからデスクトップ派で自作PCも好きで今も使っているが、新しいPCラインナップを見てもノートばかりでデスクトップが選択肢がBTOばかりになることに時代の変化を感じている。記事、動画でも多くの発信者が「デスクトップPCはオワコン」と口を揃える。

しかし、デスクトップPCは本当にオワコンなのか?自分自身を含め、今どきでもデスクトップPCを使い続ける人たちの持つ理由を考えたい。

3drenderings/iStock

最高の一台

デスクトップPCを使い続ける理由1つ目は、最高の一台を作れる点である。翻ってノートPCではサイズや重量、排熱、電源の事情で性能の限界がある。もちろん、お金に糸目をつけなければノートでもとんでもないモンスターマシンを買うことができるが、それでも本当の最高スペックはデスクトップPCになるだろう。

正直、これはもう全体の数%のマニアの域になる。仕事、ネット利用、SNSがメインのほとんどの一般利用者に当てはまる話ではないが、AI開発や高解像度のグラフィックやゲーム、マイニングなどごく一部の用途に応えられるマシンを持つロマンがデスクトップPCなら叶えられるのだ。

自作PC

こちらも実利というより趣味に近いが、自作PCを楽しめるのはデスクトップPCのみだ。

自作を一度は体験しておくメリットとしては、PCの構造や仕組みをかなり深く理解でき、PCに詳しくなる。また、パーツを1つ1つ自分で選んで組み立てていく過程で、自分が組み上げたPCで実現したい願望と向き合うことになる。「自分は本当にRTX 4090の性能を活かしきる作業をするだろうか?万が一、あまり使わない場合は無駄になるリスクがある。もう少しスペックを落としても良いかもしれない」といったことを真剣に考えるようになるのだ。

「せっかくの買い物だから」と奮発して使いもしないハイスペックモデルを買って、動画視聴やSNSで高性能を使わずじまいになるくらいなら、人生で一度は自作PCを体験しておきたい。そうすることで、買い物のたびに真剣にスペックや1つ1つのパーツ性能を考えるようになるクセがつくので有意義な経験になると思うのだ。

PCから部屋を設計する

デスクトップPCはノートPCと違ってマシンは大きく、持ち運びもできない。一度設置したらそう簡単に動かすことはできないのだ。それ故に、部屋での配線やディスプレイやサウンドなどの周辺機器の設置、掃除の想定などデスクトップPCを中心に自室の動線やデザインを考えることになる。

これは統計データによらない個人的感覚値に過ぎないのだが、今どきデスクトップPCを使うような人は、部屋がパソコン中心にデザインしている事が多いと感じる。持ち運ばない「不動の母艦」だからこそ、最高に使いやすい環境を整えたくなるのだ。そうなるとPCは単なる仕事道具ではなく、「生活の中心」となる。買い物もその母艦に合うような周辺機器になるのだ。

今後も半導体の進化に伴い、ノートPCがコンパクト、省電力化かつハイスペックとなることでドンドンデスクトップPCの出番はなくなっていくだろう。しかし、デスクトップPCならではのこだわりやロマンも依然として存在する。コスパが悪いと言われるかもしれないが、コスパの悪さを楽しむことは趣味であると考えると「デスクトップPCは趣味」として存続するかもしれない。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。