「オイシイ話」には裏がある? 冷静に調べて自主的に判断せよ

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出版の話や不動産投資、ITを使っての搾取など、あなたの財産を狙ってくる「シロアリ」たちは非常に多いのが現状です。社長はもちろん課長も社員もフリーランスも、こんな手口には騙されないでください。

できる社長のお金の守り方 オイシイ話はなぜ稼げないのか」(服部真和著)秀和システム

搾取ビジネスの「論理の飛躍」と「矛盾」

「即効性の低い」商材の場合は、堅実なビジネスと搾取ビジネスの違いは“わかりにくい”と服部さんは言います。

「そこで、ここではその見極め方をお伝えしておきます。それは『再現性』です。往々にして、搾取前提のビジネスにありがちなのが『論理の飛躍』と『矛盾』です。つけるだけで金運が上がって成功する数珠があるのなら、その人が買い占めて大儲けすればいいのです。幸せを他者にも分け与えたいのであれば、その人が儲け続けてお金をバラまけば解決します」(服部さん)

「ガンが治る水があるなら、年間40万人近くも亡くなっている病院になぜ売りにいかないのでしょうか。最も効果を測定できるのは、日に日に亡くなる方を救うことのはずです。速攻で効果が証明できれば、世界を相手にその事業は大儲けできます」(同)

これは、最近流行りのAIビジネスにも共通しています。「AIの知識をつければ儲かる」と言っている人もよく見かけますが、数年前はAIとは無縁の世界で生きている人がほとんどです。

「AIの研究は1950年から続いており、ビジネスへの積極的な利活用に絞っても、2010年以降にディープラーニングが台頭し、このころから果敢な経営への導入がなされています。そういう人たちは、生成AIの登場により、AIの概念が急速に一般化したので、自らの権威性に利用しているだけです。今になってそんなことを言うのはおかしいのです」(服部さん)

「本を出版したらブランディングされて仕事が増えると言う人がいます。しかし『出版→ブランディング→仕事が増える』という三段論法に、論理の飛躍があります。出版し、認知度が広がることで仕事によい影響を与えるものもあれば、そんなことをしないほうがブランディングになる場合もありますし、仕事が増えるとも限りません」(同)

なぜか人気が高い出版ビジネス

全国出版協会・出版科学研究所は、2023年(1~12月期累計)の出版市場規模を発表しました。紙と電子を合算した「出版市場の推定販売金額」は1兆5963億円(前年比2.1%減)となり、2年連続の前年割れとなりました。市場ピーク、1996年(20年前)の2兆6563億円から約6割に落ち込んだことになります。

出版不況といわれながらも出版には根強い人気があります。有名著者が開催するセミナーは満員御礼、気がつけば出版コンサルタント、出版ブローカーを標榜する人たちも増えました。とくにビジネスを指南するビジネス書の市場は活性化しています。サラリーマンや主婦の書いたビジネス書がベストセラーになるなどプレゼンスの高さに注目が集まっているのです。

著者(著者候補)は商業出版を目指すことになりますがハードルは低くはありません。商業出版は出版社にとって投資になり、数百万円の費用がかかるためです。これを実現するには、投資分の回収と、さらに利益が見込めると思わせることが必要になります。そのため、著名人や実績のある人、ネット発信力の強い人は有利といえます。

最近では、商業出版スクールや出版コンサルが乱立状態にあります。出版スクールは50~100万円程度、出版コンサルは200~300万円程度の費用が掛かります。しかし、出版を保障していないことからトラブルが多いのです。また、出版が決まっても刊行の際に、買取などの条件を出される場合もありますから注意が必要と言えるでしょう。

「出版プロデューサー」を名乗る人がいます。「出版プロデューサー」の仕事は著者と出版社のマッチングにあります。多くの出版社とコネクションをもつ人は強いですが、実績に乏しい編集者あがりの出版プロデューサーには注意をしなければいけません。

いまの時代は、売れる保証は無いので出版社の判断も早くなる傾向にあります。私がいずれセミナーで話したい内容。それは「出版業界をおおっぴらにした話」かもしれません。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)