飲食店の「一物二価」に感じる「アンビバレントな感覚」

飲食店予約サイトのテーブルチェックには「テーブルチェックファストパス」という人気店の行列に並ぶことなくすぐに入店して食事できるチケットがあるそうです。

対象となる店舗はまだ30店舗ほどしかありませんが、今後10倍に増やしていく予定で日本人でも利用する人が増えそうです。

例えば、定価1,000円のラーメンがファストパスなら2,000円であれば、1000円余計に払っても並ぶ時間を節約したい観光客にはニーズがあると思います。

お店や予約サイトも同じ商品の販売で収益アップしますから双方にメリットのある仕組みです。

このような飲食店の「一物二価」は、行列店だけではなく予約困難店でも別の形で導入が広がっています。

予約困難店は来店した常連客が次の予約を取ってリピートすることから、新規客が全く予約できない状態になっているところも珍しくありません。

「食オク」というサイトでは、一般ルートでは予約できない予約困難店の予約権を入札によって販売して提供しています。

例えば、人気寿司店の予約権を3万円で落札できれば、お店でのお会計が5万円なら、実質8万円の支払いになります。

食オクに払った落札料の多くは飲食店に入るようですから、2重価格です。

私は同じ2重価格でも、前者のファストパスには肯定的ですが、後者の食オクには否定的と「アンビバレント(相反)な感覚」を持っています。

なぜなら、ファストパスには一般客とのサービスに優先という付加価値がありますが、食オクには価格の違いによる一般客に対する付加価値が無いからです。

むしろ、予約困難店にリピートで来ているの常連の方が、高いお金を払ってきている食オクの客よりも優遇される可能性もあります。食オクの利用者は、リピートしない一見客の可能性が高いからです。

せっかく8万円も払って予約したカウンターの隣席で、常連が大将と楽しげに談笑しながら同じものを5万円で食べている。

想像すると、何だか情弱の田舎もんとしてバカにされているようで、あまり気持ちの良いものではありません。

超高級店や超予約困難店にも色々出かけてわかったことは、日本には普通に予約して行けるお店にも素晴らしいお店が溢れているということです。

週末に出かけた北海道(写真)でもそれを実感しました。

逆に全国的な有名店やミシュラン三つ星店でも、敢えて無理して行かなくても良いと思うお店も意外に多いのです。

だから、これからも自分にとって「価値>価格」のお店を探して、”絶対に誰にも行かせないよう”にSNSで配信していこうと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年7月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。