「オルカン」はやめなさい、でも「NISAの積立」は続けなさい

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先週から金融マーケットが大混乱となっています。日銀の利上げとアメリカ景気減速懸念が重なったことから、円高と株安が同時に進行し日本の個人投資家は大きな打撃を被っています。

年初から新しいNISAが始まり、株式投資の世界では「オルカン」と呼ばれるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)というファンドが人気になりました。これは日本を含む先進国と新興国の株式にインデックス投資を行う投資信託です。

株高と円安の相乗効果で、今年前半の2024年1月~6月のわずか6か月だけで26.5%と高い運用成果を上げました。

しかし、7月の下旬からのマーケットの下落で今後は今年前半のプラスリターンをはき出してしまうことが予想されます。この投資信託は日本株の構成比率はわずか5%程度で、9割以上が外貨となっています。円高と株安の相乗効果には極めて脆弱なファンドなのです。

グローバルな株式分散投資を行うことは理にかなっていますが、このファンドだけで運用するのは外国株式に偏重した資産配分で、為替リスクの取り過ぎです。アメリカ株の配分比率が6割以上になっています。

連日大きく下落している株式マーケットですが、長期的に見れば株式を安く購入できるチャンスと見ることができます。ただし、最安値をピンポイントに当てにいくことは簡単ではありません。ここは積立投資の出番です。

1987年のブラックマンデーの時も、2008年のリーマンショックの時も、多くの個人投資家が損失を出し、マーケットから撤退しましたが、後から振り返れば急落した時こそ絶好の購入チャンスになりました。今回も同じことが繰り返されることになると思います。

NISAの税制優遇枠を使った積立投資をやっている人はここでやめてはいけません。ただし、積立をしている銘柄についてはリスクと投資目的に見合ったものはどうかをしっかり見直しすることが必要です。

今回のマーケットの急落からの教訓は『「オルカン」はやめなさい、でも「NISAの積立」は続けなさい』です。

平時からボラティリティ(変動率)の上昇によって相場から振り落されないような対応をしておくことが大切なのです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年8月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。