日本の富裕層が海外移住しようとしたとき、真っ先に思いつく国はシンガポールでしょう。
そこで、人気のエリアや家賃について、シンガポールに30年以上も住む東京不動産(Tokio Property Services)の高野社長に話をうかがいました。(インタビュー日:2024年7月5日)
シンガポールには日本人居住エリアは特になく、どこに住んでもかなり便利
――シンガポール全体の地理を教えてください。
高野社長(以下、敬称略):シンガポールは、東京23区や淡路島とだいたい同じくらいの面積の、非常に狭い都市ですし、島全体が平地です。ですから、シンガポール全体に住民が住んでいます。
――シンガポールで、日本人にとって便利なエリアはあるでしょうか?
高野:日本人学校はシンガポールの東部と西部に1校ずつありますので、日本人学校に通うためにはこのエリアが便利というのは特にありません。また、ここ数年は、ドンキホーテが進出して、「DON DON DONKI」という店を運営しています。日本の食品全般(野菜・果物、肉・魚、総菜、菓子など)を扱っており、シンガポール在住日本人の多くがDON DON DONKIでよく買い物をしていますが、シンガポールだけで16店舗もあります。どこに住んでも、買い物に困りません。
やはり便利なシンガポールの中心オーチャード通りエリア!
――なかでも便利なエリアはどこでしょうか?
高野:シンガポールで一番の繁華街であるオーチャード通り周辺でしょう。いわば、東京の都心5区(港区、千代田区、中央区、渋谷区、新宿区)、なかでも、麻布・広尾・六本木のイメージです。買い物に便利というのもありますが、それだけではありません。日本の中学・高校・大学に進学するための塾は、この辺りにあります。塾は遅くまで授業をして22時くらいになることもありますから、お子さんが塾に通うご家庭で、このエリアを選ばれるケースが多いです。
――このエリアの家賃はいくら位でしょうか?
高野:リバーバレーなどオーチャード周辺まで含めると2ベッドルームのコンドミニアムを借りる場合、築30年位の古い物件であれば、5,000シンガポールドル(約60万円)くらいからあります。しかし、築浅の物件だと、7,000シンガポールドル(約84万円)くらいからでしょう。ちなみに、オーチャード通り周辺の物件に限らず、たいていのコンドミニアムには、スイミングプールとスポーツジムが付いています。敷地の広いコンドミニアムには、テニスコートが付いているものもあります。
単身世帯・夫婦2人世帯であれば、ビジネスにもナイトライフにも完璧なタンジョンパガーがおすすめ!
――オーチャード通りエリア以外で、人気のエリアはありますか?
高野:Novena(ノヴェナ)はファミリー層に人気の住宅地です。オーチャード通りやマリーナエリアといった中心部へのアクセスも良いですし、ショッピングモールも充実しています。東京で言ったら、世田谷区でしょうか。
――単身世帯や夫婦2人世帯に人気のエリアはありますか?
高野:Tanjong Pagar(タンジョンパガー)でしょう。このエリアは、オフィス街の近くですからビジネスパーソンに便利です。また、たくさんの飲食店がありますから外食を楽しむのにぴったりでしょう。さらに、ドンキホーテ、Daisoなど日系の店を含め日常的な買い物にも便利です。東京で言ったら、渋谷や新宿でしょうか。
――先ほどのNovena(ノヴェナ)やTanjong Pagar(タンジョンパガー)のエリアの家賃はいくら位でしょうか?
高野:2ベッドルームのコンドミニアムを借りる場合、築30年位の古い物件であれば、5,000シンガポールドル(約60万円)くらいからあります。しかし、築浅の物件だと、7,000シンガポールドル(約84万円)くらいからでしょう。これらのエリアも人気なので、やはり家賃は安くありません。
――人気エリアの家賃は安くないですね。日本人駐在員ファミリーはどれくらいの家賃の家に住んでいるのでしょうか?
高野:私の体感ですと、家賃が安めの方々は家賃3,000から5,000シンガポールドル(約36万円~60万円)までの家に住んでいる印象です。そして、駐在員の全般的な標準が5,000から6,000シンガポールドル(約60万円~72万円)でしょうか。多くの日本人が満足できるレベルの家を求めると、9,000シンガポールドル(約108万円)くらい出さないと難しいでしょう。
――安い物件を借りている方々は、どういった所に住んでいるのでしょうか?
高野:特定のエリアというより、シンガポール全域に散らばっている印象です。以前は、MRTの駅が近くに無いと不便と思っている方が多かったですが、いまは、バスが通っていれば十分という感じになっています。シンガポールはバスが発達していますし、Google mapがあればバスも使いやすいですから。
シンガポールの不動産を買う選択肢は?
――コンドミニアムを買う方もいらっしゃいますか?
高野:居住用物件を買う場合、シンガポール人であれば購入価格の3%の印紙税で住むのですが、外国人や法人が買う場合、投機抑制策として購入価格の60%の印紙税がかかります。ですから、コンドミニアムを買って売却益を狙うというのは現実的ではありません。60%値上がりしないと元を取れないからです。
――日本人で物件を購入して住んでおられる方もいらっしゃいますか?
高野:有名企業の創業家でシンガポールに住んでいる方々は、カジノリゾートも並ぶセントーサ島の一戸建てを購入して住んでいらっしゃいますね。
――高野社長はシンガポールに30年住んでいらっしゃいますが、この30年間で、在シンガポール日本人の立ち位置について、変化を感じますか?
高野:以前は日本人というと「金を持っている人達」と見られたものですが、今では、貧乏人扱いされてしまいますから、日本の経済的地位がだいぶ落ちたと感じますね。そんな中、シンガポール在住日本人は工夫して切り詰めながら生活しています。
インタビューを終えて
シンガポールの物件の賃料は日本と比べると相当に高いですが、シンガポールに来るたびにアジアの金融ハブならではの勢いを感じますし、シンガポールに移住したいという富裕層が多いのも納得です。家賃の高さも、これが世界の先進国のスタンダードであって、先進国の中で日本だけ成長していない結果なのでしょう。